松沢呉一のビバノン・ライフ

ドイツのスラブフォビアと「私はどこの国から来たでしょう」の続編-(松沢呉一)

「私っていくつだと思います?」と「私ってどこの国から来たと思います?」[下]—サイレント・エピデミック[第一部付録編 3]」の続編です。

 

 

 

ドイツ人のスラブフォビア

 

vivanon_sentence外国人受け入れ、難民受け入れ問題を考えるにはドイツが大いに参考になります。

反ユダヤ思想がムスリムとともに入ってくる。それをAfDなどの排外勢力が利用し、少なからず支持を得てしまっています。「AfD=ネオナチ」とは言えないまでも、ネオナチやその類似勢力を勢いづかせるきっかけになってしまっているのです。反ユダヤ勢力を排外主義反ユダヤ勢力が利用する皮肉。

この背景にあるのは、いまなおドイツ人の中にある「わしらが一番」というゲルマン民族プライドです。彼らにとっての「劣った外国人」にはアフリカ系、アジア系のみならず、スラブ系も入っています。

ロシア系ドイツ人は多いですが、出稼ぎ労働者にも多く、同じ職場にスラブ系労働者がいても会話さえしないドイツ人が少なくないとの記述を読んで、「ポーランド人をバカにしくさっていた戦前のドイツ人と変わらない」と思いました、このスラブフォビアがナチスのポーランド人家畜化計画になっていきます。

「だから外国人を受け入れてはならない」ではなくて、「どうすればそれを克服できるのか」を考えないといけないってことです。

外国人が増えれば、反ユダヤだけじゃなく、トルコにおけるクルド、ミャンマーにおけるロヒンギャ、エチオピアにおけるオロモやティグレのような民族対立も持ち込まれる。カチンの人に聞いたのですが、ミャンマーにおけるカチンの立場も微妙。

「ホモは死ね」と本気で考えている人たちももう入ってきています

※2020年8月5日付「ruprecht」 スラブフォビアは広くヨーロッパにありつつ、もっとも強いのがドイツで、ドイツ帝国から始まって、ナチスの時代がピーク。戦後は反共産主義と合体。今も消えておらず、テレビや映画ではしばしば貧乏人と悪人として登場。しかし、正面からは語られず、調査もなされていない差別意識だと書かれています。ベレー帽がスラブ系のアイコンになっているそうな。戦前はスラブ系に限らず労働者階級のアイコンだったはず。

 

 

まずは身近なところから

 

vivanon_sentenceそれでうまくいくかどうかはわからないけれど、その国の文化や考え方を知るために、目の前の人たちとコミュニケーションをとることでしか始まらないと思います。

現実に存在していますが、「差別反対」「難民を受け入れろ」と大声で言いながら、目の前にいる外国人たちとなんらコミュニケーションをとろうとしていない人たちはうそ臭い。フランス人の友だちがいることは自慢でも、ネパール人と友だちになろうとしない人たちはうそ臭い。

こっちから出かけていく場合は現地の言葉をこっちが覚えるのは当然として、日本だったら、あっちが日本語を勉強してくれていますから、話は簡単。

エチオピア人とのコンタクトは挫折しましたが、時間をかけて話していくしかない。リトル・アフリカ(葛飾区四つ木)は遠いし、クルド人の拠点も埼玉(川口市)なので遠いですが、東アジア、東南アジア、南アジアの人たちはコンビニや飲食店にいっぱいいるので、そこから始めるしかないと私は思っているわけです。

いまさらながら、どうしてやたらとコンビニや銭湯で外国人とダベっているのかの説明をしてみました。

※2021年5月27日付「BBC」 エチオピアになんも関心のない人が多いでしょうが、移民・難民を受け入れるなら、国外問題ではなくなります。国外のニュースにも関心を持つしかない。ティグレ紛争はエチオピア政府の終結宣言後も続いていて、バイデン政権がエチオピア政府とエリトリア政府に停戦を呼びかけたという記事。米国は両国政府と軍のビザ発行も停止しています。

 

 

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