人口比で日本の7倍以上死んでいるドイツを手本にすべきか?—「コロナ自警団」はファシズムか[5]-(松沢呉一)
「自警団的行動より構造的差別を危惧するドイツの研究者に同意する—「コロナ自警団」はファシズムか[4]」の続きです。
第一ラインを第二ラインが越えやすい日本
ここまで見てきたように、自粛警察・コロナ自警団的な動き、それを支えるコミュニティの強度には地域差があります。と同時に国民性の違いもあります。
さんざん「ポストコロナのプロテスト」シリーズで見てきたように、厳しいロックダウンやマスクの義務化をした国では、それに対する反発も強く出ました。米国、オーストラリア、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペインなど。もちろん、それができる国に限っての話です。
これらを担った人々の構成は、国によって違っていて、とくにドイツは多様で、アンチワクチンを含むプランデミック派、極右、極左、環境派などさまざま。報道では極右が取り上げられることが多かったのですが、大規模なプロテストでは決して主流派ではなく、極右排除の動きもありました。
では、もし日本でロックダウンやマスクの義務化がなされたとして、それに対するプロテストが起きるかどうか。少しは日本でもプランデミック的な動きが見られましたが、そもそも日本ではこれに限らず、表立って意思表示をすることを好みません。そのためガス抜きの場が確保しにくい。
ここで「瀬木比呂志著『絶望の裁判所』でもっとも注目した指摘—第一ラインと第二ラインを見極める[上]」「個のルール・コミュニティのルール・社会のルールを峻別すべし—第一ラインと第二ラインを見極める[下]」を思い出していただきたいのですが、日本ではデモといった形でのプロテストをあまり得意とはしない。
アンチ・ロックダウンのプロテストは第一ラインに対して、第二ラインが手前にあります。厳しくない方に引っ張ろうとする。しかし、日本ではこれが起きにくい。むしろ法や政府の姿勢に乗った上で、より厳しい姿勢をとろうとする人が多いのではないか。中国に近い。
中国はそれが顕在化するのに対して、日本では隠然と行われそうです。それを踏まえると、田野教授が望むように政府が強い姿勢を見せると、それを超える自粛を求める自警団が登場した可能性の方が高かったのではないか。それもこれまで通り隠然とした形で。
これが日本的ストレスの発散になりそうです。
※YouTube「Germany: Anti-lockdown protesters form human chain in Cologne」よりロックダウンに反対するアンティファ・グループ。アンティファにもマスクをしていないのがいて、「マスクしないヤツらの行動は危険だから反対」というわけではなくて、水平思考711(Querdenken711)のようなアンチ・ロックダウン行動は、当初AfDやネオナチを排除していなかったためだと思われます。どちらの勢力もなにかにつけ外に出て行動する。
本当にドイツは手本になるのか?
田野教授は私がよく批判している「ドイツは素晴らしい。それに引き換え日本は〜」の人ではないかと疑います。私はヨーロッパの中でドイツが抜きん出て素晴らしい国とは思えていません。むしろナチスを生み出したドイツの質を今も孕んでいると見ています。
それでもメルケル首相はドイツ人の特性を踏まえて「うまいことやっている」と私にも見えてました。メルケル支持は強く、キリスト教民主同盟(CDU)の支持率も上がり、他党の支持が軒並み落ちていましたが、今現在は混沌としてきています。元に戻っただけとも言えますけど。
上は今月行われるの総選挙の予想(8月27日付)。下は前回2017年との比較。
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