松沢呉一のビバノン・ライフ

どうせもうじき人類は滅びるよ—COP26に先立って発表された国連報告書-(松沢呉一)

 

 

京王線刺傷事件より気候変動の方が怖い

 

vivanon_sentence京王線刺傷事件の犯人は、犯行後に車両内でタバコを吸ってましたが、あれを観てもさすがに吸いたくはなりませんでした。あの映像を撮った人によるとタバコを持つ手が震えていたそうですから、無理をしてカッコつけていたのかもしれない。

なんてところまで確認しながら撮っている人も怖いわ。あの場面で私は映像を撮れるかどうか、シミュレーションしてみたのですが、答えは出ません。ああいう場面でもわりと冷静でいられるとは思うのですが、だからと言って映像まで撮ろうとするかどうか。たまたま何かを撮っていたら、その流れで撮り続けるとして、スマホを取り出して電源を入れてカメラをそちらに向けて、といった過程を経なければならないことを考えると、それより逃げるのが先じゃなかろうか。

ああいう事件も怖いですが、私は気候変動の方が怖い。

先週のイタリア・シチリア島の洪水。

 

 

殺人鬼からは逃げられても、ちょっと走ったくらいでは洪水からは逃れられない。

各地で死亡者+行方不明者は一桁なので、大きくは取り上げられていないですが、カリフォルニアに続いて、アルジェリア、チュニジア、イタリアなど、地中海周辺部の熱波→山火事エリアで現在洪水ラッシュになっています。熱波に襲われた地域で洪水は起きる法則。

そして、熱波のエリアは今後さらに拡大していくのは必至です。

他にパラグアイ、ウルグアイ、ブラジル、アルゼンチンなどのラテンアメリカで洪水が発生。それぞれ原因、状況は違いましょうけど、数が多すぎて、ひとつひとつはチェックしてません。

 

 

COP26は期待外れに終わりそう

 

vivanon_sentence今回の衆院選は投票日がCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)の初日とかぶっていたので、少しは環境問題が争点になるのかと予想していたのですが、全然でした。

COP26自体、結局、各国の思惑が透けて見えて、前向きに調整できるとはとうてい思えず、やっぱり「遠からず人類は絶滅するな」と確信しました。

世界最大のCO2排出国である中国に至っては、今なお「中国は発展途上国だ」と言い続け、首脳がCOP26に参加せず。先進国が発展途上国を支援するのは正しいですが、「お前が言うな」です。

このままいくと確実に発展途上国にしわ寄せが行くのですから、発展途上国こそがこの問題を解決してもらわないと困るのです。国内の食糧生産が滞り、かつ世界的に穀物も食肉も高騰して買えなくなります。結果、そういう国から餓死をする。

中国だって今年のような洪水が毎年発生するようになったらまずいことはわかっているだろうに。現に食糧も燃料も値上りして、庶民は困窮し始めていると伝えられています(豚肉はなぜか安くなっています。また、値上がりしているものも、すべてが気候変動のせいではなく、ゼロ・コロナ対策の継続や停電の影響も大きい)。

中国の物価を調べていて気づいたのですが、世界的に砂糖も高騰しているんですね。日本でも昨年に較べて1.6倍。これは砂糖生産国であるブラジルや北米で、気候変動によって生産量が減っているためだそうです。何もかも。

 

 

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