松沢呉一のビバノン・ライフ

年の瀬のスーパーで感じた「最後の晩餐」—毛ガニもタラバガニも食えなくなる時代-(松沢呉一)

「唇が物語る」シリーズを今年中に終わらせようと思ったのですが、あと4回はあるので終わらせられそうになく、急遽別のものを出して今年の〆ってことにします。

 

 

イクラもウニもカニもカズノコもすべてが高騰

 

vivanon_sentence昨日また中野区の銭湯に行きました。

その帰りにスーパーに立ち寄ったら、鮮魚売り場の、50代と思われる担当者がマイクで呼び込みをしていました(すでに店内にいる客に対する呼び掛けなので、「呼び込み」は適切ではないかもしれないけれど)。これが流れるような口調で、なおかつ思わず引き込まれる内容だったため、大いに感心しました。

このスーパーには大量のタラバガニとカズノコが並んでいたのですが、高い。この店が高いのではなくて、どこの店でも高い。

毛ガニもタラバガニも値段が上がっているのは以前から気づいていて、タラバガニは大雑把な味なので、高かったら買わないだけです。毛ガニは好きなので、高くても買いたくなるのですが、一杯5千円じゃとても買えない。5千円はまだ安い方です。

小さいだけで味は毛ガニと一緒のクリガニでいいや。クリガニはあんまり売ってないので、ズワイガニが妥当なところか。

イクラもタラコも、魚卵はだいたい好きですが、子どもの頃からカズノコには興味がないので、こっちもパス。私は尿酸値が高くて痛風予備軍でもありますので、イクラやタラコも控えていますし。ちなみに、魚卵やレバーだけでなく、牡蠣やあん肝も尿酸値が上がることを最近になって知りました。全部好きなものです。

 

 

鮮魚売り場のおっちゃんの言葉に見るリアリティ

 

vivanon_sentenceでありますから、買う気はなかったのですが、おっちゃんの言葉に興味をかきたてられました。

「サケの不漁でイクラが高くなっていて、ウニも不漁で高くなってますが、タラバガニとカズノコも高いです。この値段では買えないと思う方も多いでしょうが、今はまだ安いのです。これから先、値段が下がることはありません。タラバガニはロシアやアラスカで不漁が続いていて、もう元には戻らないので、来年は間違いなくもっと高くなります。あと何年かすると、“あの頃は安かった”と思い出すはずです。頑張って今年は大量に確保しましたので、これで最後だと思っておなかいっぱい食べてください」

もう元には戻らないのはティッピング・ポイントを超えたためです。あとは滅亡まで一直線ですから、「最後の晩餐を楽しみましょう」と言っているように私には聞えました。

 

 

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