循環湯とレジオネラ菌—浴槽の湯を毎日入れ替えていない銭湯の見分け方-(松沢呉一)
夏休みの高校生たちの会話
数日前に、遅い時間の男湯では、連れ立ってくる人同士の会話以外は会話が交わされないという法則を書きました。しかし、今の時期はシーンと静まり返っているわけではなく、いつもよりも賑やかな日も多いものです、夏休みになった中学生、高校生、大学生がグループで来ていることがあるためです。
先週末、銭湯に行ったら、帰り支度をしている高校生4人組が服を着た状態でだべってました。まだ話し足りないって感じです。
話の中心になっているのは、眼鏡をかけた爽やか君。彼はこう言います。
「オレは、美人かどうかよりも、優しいことが絶対条件。すべてを許してくれるような優しい人が理想」
乳が大きい方がいいとか、脇毛が生えていた方がいいとか、フェラがうまいとか、そういうことは一切問わず、優しさだけが基準です。高校生らしくてかわいい。
他の子がこう聞きました。
「だったら、佐久間さんは?」
佐久間だったかなんだったか忘れましたが、どうやら彼らが所属するサークルの先輩のようです。彼らは2年生で、佐久間さんは3年生かな。
「佐久間さんはたしかに優しいんだけど、あそこまで優しいと、ただのいい人になってしまうんだよね。母親みたいというか。佐久間さんは譲るよ」
なんだよ、優しさだけが基準じゃないんかよ。優しいのがいいというのでここまで尽くしてきたのに、女心を弄ばれた気分です。
昨日は、夜の11時なのに、4歳くらいの息子を連れたお父さんがいました。普通はこんな遅くまで起きていないのでしょうけど、幼稚園も夏休みですから。
いつもと違う銭湯風景が見られて楽しい。
ここまでは銭湯の魅力について。以下は銭湯のダークサイドについて。
※写真は高校生がいた銭湯ではなく、東新宿の東宝湯です。ここは下に出てくる「浴槽全面に入浴剤を使っている銭湯」なので、毎日湯を入れ替えているはずで、清掃もしっかりしています。
レジオネラ症になると最悪死ぬ
半月ほど前には、「浴槽の湯を使い回している銭湯は避けた方がいい」という話を書きました。
あの話はもうちょっと知られていてよさそうなのですが、「毎日湯を入れ替えているのか否か」は、原則内部の人間しかわからんですから、活用できる知恵にはなりにくい。となると、銭湯全体に危険なイメージがついてしまいかねない。
また、今は入れ替えている銭湯でも、いつか井戸水が涸れてきたり、水道料金が払えなくなってきた時に、毎日入れ替えることができなくなるかもしれないので、銭湯関係者が、このことを外に向けて言うことはあまりないのだろうと思います。
もちろん、濾過装置がしっかりしていれば湯を循環して数日使いまわしていてもいいのですけど、濾過装置自体が細菌培養装置になってしまっていることがあって、温泉でレジオネラ症に感染したという話が時折話題になってます。
大腸菌やサルモネラ菌で下痢をするくらいだったらまだよくて、レジオネラ症になると、最悪死にます。
詳しくは以下をお読みください。
厚労省「レジオネラ症の知識と浴場の衛生管理」
この中に「毎日、浴槽を洗浄・換水し、浴槽水を循環させない浴槽では、生物膜は形成されにくい」とあるように、毎日湯を入れ替えて、しっかり清掃をすることに越したことはないのです。そうしている限りは、細菌が増殖するってことはまずない。
これは自宅の風呂でも同じで、まめに掃除した方がいいみたいです。
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