松沢呉一のビバノン・ライフ

共産党内でリベラリズムを求めても無駄—松竹伸幸氏の除名問題-(松沢呉一)

 

党首公選制を主張すると除名になる日本共産党

 

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党首公選制を主張して、党規違反で共産党を除名になった松竹伸幸氏の件が話題です。

Colabo問題はお茶の間までは浸透していないのに対して、松竹氏除名問題は広く拡散されているので、共産党のダメージは相当のものでしょう。次の選挙が楽しみです。

 

 

どこかで顔を見たことがあります。おそらくかもがわ出版の編集長としてです。

「このままだと共産党は終わる」という危機感から、昨年10月に『シン・日本共産党宣言—ヒラ党員が党首公選を求め立候補する理由』を出版して除名処分になり、共産党の終焉が決定しました。

党規の以下に抵触したということらしい。

 

 第五条 党員の権利と義務は、つぎのとおりである。
 (一) 市民道徳と社会的道義をまもり、社会にたいする責任をはたす。
 (二) 党の統一と団結に努力し、党に敵対する行為はおこなわない。
 (三) 党内で選挙し、選挙される権利がある。
 (四) 党の会議で、党の政策、方針について討論し、提案することができる。
 (五) 党の諸決定を自覚的に実行する。決定に同意できない場合は、自分の意見を保留することができる。その場合も、その決定を実行する。党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない。
 (六) 党の会議で、党のいかなる組織や個人にたいしても批判することができる。また、中央委員会にいたるどの機関にたいしても、質問し、意見をのべ、回答をもとめることができる。
 (七) 党大会、中央委員会の決定をすみやかに読了し、党の綱領路線と科学的社会主義の理論の学習につとめる。
 (八) 党の内部問題は、党内で解決する。
 (九) 党歴や部署のいかんにかかわらず、党の規約をまもる。
 (十) 自分にたいして処分の決定がなされる場合には、その会議に出席し、意見をのべることができる。

日本共産党規約より

 

関係するのは、第三項、第四項、第五項、第六項、第八項あたり。党の決定に異論がある場合は、党内で批判し、質問し、意見を言うことができるのに、松竹氏はそれをやらずに、外部で批判をしたのが第六項、第八項違反ということのようです。

これを聞いた当初、「共産党はそういう党であることは自明であって、いまさら何を言っているのか」とも思ったのですが、この記者会見で松竹氏は、規約上、内部の問題を外に出すことがまずいのであって、憲法は内部の問題ではなく、広く国の問題、社会の問題であり、公選制は内部の問題であると同時に外部の問題ですから、規約違反ではないと言ってます。「内部問題」の範囲が争点。

例えば共産党の議員が盗撮で逮捕されればもはや内部の問題ではないですが、逮捕される前であれば内部の問題か? バレてもいないのに、内部の問題を告発するようなことは禁止というのが本当の目的なのではなかろうか。

また、かつては個々の党員が意見を表明する方法がなかったのに対して、現在はインターネットがあり、多くの党員自分の意見を言っているのだから、この規約自体が無効化しているのではないかとの意見を述べています。現実は変化していても、共産党幹部の頭は変わっていませんでした。

 

 

共産党の民主集中制

 

vivanon_sentence日本共産党規約の第三条に民主集中制の基本原理が書かれていて、「党内に派閥・分派はつくらない」と第四項にあり、これが公選制を取らない理由になってます。日本共産党にとっての民主集中制については「赤旗」のサイトを参照のこと。スターリニズムとは違うと言ってますが、権力を一極集中させる制度であることに違いはない。

公選制にしたら、候補者同士の対立が始まり、それぞれの候補が党員を取り込んで派閥ができることを避けたいってことのようですが、長期に渡って同じ人物がトップに君臨すると「絶対的な派閥」が一つできてしまい、一極集中に加速がつきます。それこそ民主集中制ですから、独裁制や全体主義を支持する人々にとっては理想的。

 

 

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