松沢呉一のビバノン・ライフ

改めて「調査報告」を観る—Colaboが浅野文直・川崎市議を訴えた不可解[中編]-(松沢呉一)

無意味な記者会見・無意味な訴訟・無意味な活動—Colaboが浅野文直・川崎市議を訴えた不可解[前編]」の続きです。

 

 

浅野文直・川崎市議の「調査報告」をすべて観直した

 

vivanon_sentenceロシアやイランにうつつを抜かしていたため、「無意味な記者会見・無意味な訴訟・無意味な活動—Colaboが浅野文直・川崎市議を訴えた不可解[前編]」の続きを出すのが遅れてしまいました。昨日もロシアの鉄道で爆発がありましたが、グッと押さえます。

2023年4月24日付「毎日新聞」より。

 

自治体からの業務委託費を不正に受領したなどとする虚偽の動画投稿で名誉を傷つけられたとして、若い女性の自立を支援する一般社団法人「Colabo(コラボ)」が24日、浅野文直・川崎市議(52)に330万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。

訴状によると、コラボは性被害や虐待を受けた女性を保護する事業を東京都や川崎市などから委託されている。浅野市議は2022年12月~23年2月、「Colabo調査報告」と題して計19回の動画を動画投稿サイト・ユーチューブに投稿。川崎市から委託を受けてコラボが一時保護した3人について、東京都からの委託分の人数にも計上されていると主張し「委託費を重複して受け取った」と発言したとしている。

コラボ側は、川崎市の3人分は東京都への計上分に含まれていないとし、浅野市議の発言は事実と異なるとしている。提訴後に記者会見したコラボの仁藤夢乃代表は「活動報告書の内容を都合よく切り張りされた」と訴えた。

 

これだけでは全然わからんですね。

浅野市議は2022年12月~23年2月、「Colabo調査報告」と題して計19回の動画を動画投稿サイト・ユーチューブに投稿」とあって、そのほとんどを私は観ていると思いますが、名誉毀損に当たるような内容があったとは思えない。浅野市議は、二重計上があった可能性を指摘していて、その根拠も挙げています。その上で、公開質問状を出したにもかかわらず、締切日までに回答はなく、それ以降も回答がないまま、提訴してきたわけです。

つっても、動画の内容を正確には覚えておらず、、間違いがあるといけないので、最初からすべて観直して、浅野市議の提示している疑義を確認します。

 

 

 

浅野市議が挙げる疑義

 

vivanon_sentenceあくまで例ですが、Colaboが、家出してきた16歳の高校生を新宿で保護し、住所を聞いたら川崎市だったとします。親の暴力がひどくて、「家に帰りたくない」となれば、児童相談所に行くことになりますが、日曜日のため、川崎市の児童相談所はやっておらず、翌月曜日までColaboが預かります。

この時に、川崎市の児童相談所はColaboに委託をしたとして、委託金を支払います。しかし、Colaboは東京都からの委託事業として資金を得ているので、公金を二重に受けることになります。

現にColaboは川崎市、横浜市の児童相談所、また、神奈川県営の複数の児童相談所からの委託金を受け取っており、これが適正なのか否かというのが第一点の疑義。浅野市議はこれを「二重計上」と呼称しています。

たとえば公的な助成、委託を受けていない団体が、川崎市から委託金を得るのはいいとして、他自治体からの委託を受けている団体が二重に川崎市や横浜市から委託金を得るのはおかしくないか? 内容が重複していなければいいとして、Colaboは一時避難シェルターを運営しています。

第二点目の疑義はその際の金額です。川崎市の児童相談所は、児童相談所が預かる前の一時保護について、私人に対しては1日約1万円を支払っています。私人というのは、たとえば学校の教員が、生徒を一晩家で預かったような場合です。

すでにシェルターなどの施設を持っている事業所の場合は約5千円を支払っています。施設代や人件費は、なんらかの資金によって予めまかなわれているので、安くていい。

若年被害女性等支援モデル事業で委託されているColaboに対しては、私人として約1万円が支払われていて、そもそも私人扱いが妥当なのか否かについて疑義がある旨を浅野市議は語っていますが、この疑義については軽く触れただけで深入りしておらず。

第三点目の疑義はこの委託金がどう処理されているのか。

 

 

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