レマの「Calm Down」がイランでプロテスト・ソングに—エクバタン・ダンスを踊るイラン女性たち-(松沢呉一)
「イランの女学校に毒ガス攻撃が続いている—不服従に対する報復?」の続きみたいなもんです。
イランでストライキとデモが連発
現在イランでは激しいインフレが進行し、生活ができなくなった石油関連の労働者たちが賃上げを要求してストライキに入っていて、これが他産業にも波及して、デモも発生しています。
マッサ・アミニさんの死から始まった昨年のプロテストと直接には関係していないですが、「あれがあったからこれがある」という程度にはつながっているようでもあります。つまりはこれが反政府行動に転化する可能性があるってことです。
あの時のような公道での大規模なプロテストはなりを潜めた感がありますが、ずっとイラン人たちの中でプロテストは続いています。
「Calm Down」のダンスで拘束された5人
では、この辺で音楽をお楽しみ下さい。
ええ曲じゃ。
昨年からやたらと耳にするようになって、「アフリカっぽいな」と気になってはいたのですが、どこの誰の曲なのか、最近になってやっと知りました。
ナイジェリアのミュージシャン、レマ(Rema)の1stアルバム(2022年3月)に収録された「Calm Down」がヒット。新たに米の歌手であり、女優でもあるセレーナ・ゴメス(Selena Gomez)を迎えての新ヴァージョンがこのMVです。このヴァージョンは、4億再生回数を超える大ヒットです。
オリジナルの段階で、「踊ってみました」的なダンスも量産されていましたが、新ヴァージョンでいよいよ火が着いています。
この5人はイラン人の10代で、テヘランで撮影されたものです。3月8日の国際婦人デーに公開され、セレーナ・ゴメスは勇気あるダンスとして賞賛。
イランでは、女は人前で踊ることが禁止されています。ヒジャブも違法ですけど、現在は路上では黙認。しかし、このように広くインターネットで拡散するのはご法度で、その上、ダンスです。
彼女らは拘束され、ヒジャブをして反省の弁を述べる動画に出ることを強要されました。いつものやり方。
彼女らを拘束したのは道徳警察だと報じているメディアもありますが、おそらくこれは間違いで、拘束したのはインターネットを取り締まっているサイバーポリスだと思われます。
しかし、道徳警察は表向き廃止として活動を抑えながらも、いつでも復活できる体制にあり、すでにプロテストが沈静化したため、活動再開した可能性もなくはない。仮にこれが道徳警察によるものではなかったとしても、本質は何も変わってない、
だから、TBSの須賀川記者にはこの辺を突っ込んで欲しかったものです。
ヒジャブをしないで街を歩く女たちもインターネットで顔は晒したくない。だから、TBSの映像でも顔は出せなかったわけです。さらに、「ヒジャブをしたくないけど、まだ怖い」という人たちが何倍もいて、大半の女たちがヒジャブをしているのは、自分たちで選択したものだとは言いきれそうにない。
(残り 879文字/全文: 2295文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ