松沢呉一のビバノン・ライフ

イランの女学校に毒ガス攻撃が続いている—不服従に対する報復?-(松沢呉一)

 

イランのカザリィ副大統領インタビューの不満

 

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ちょっと前に、その後のイランについて取り上げましたが、TBSの須賀川拓記者がイランのカザリィ副大統領にインタビューしています。

 

 

 

数日前に公開されたものですが、取材したのは2月末で、「報道特集」でオンエアされ、今回公開されたのはそのロングヴァージョンということです。

副大統領を相手にグイグイ食い込むところには感心したのですが、肝心なところに触れられておらず、肩透かしを食らった気分。

「肝心なこと」というのは、たとえば「ロシアにイランがドローンを提供している事実」についてだったりしますが、副大統領へのインタビューともなると、短い時間しか許されなかったと思われて、別テーマまでは盛り込めなかったのだとしてもやむをえまい。また、取材時はその辺の情報が出揃っていなかったのかもしれない。

そもそもこの副大統領は女性・家族問題担当大臣で、閣僚が並ぶ中に顔を見せていることはありますが、対外的に重要な役割を果たしているわけではなくて、ロシアのことを聞いたところで、「知らんがな」でスルーされそうでもあります。

女性・家族問題についてもその肩書に似合うだけの実権を持っているのかどうかも確認できず。ナチスドイツで女性としてもっとも高位にあったゲルトルート・ショルツ=クリンク同様のお飾りかもしれない。かざりぃというくらいで(ショルツ=クリンクは戦後までナチスを肯定し続けた人物の一人でしたから、熱狂的なヒトラー信奉者であったことは間違いないとして、会議に呼ばれることもないお飾りでした)。

しかし、ここで語られたテーマで言えば、「道徳警察は廃止されたのか」「収監されたままの多数の人々はその後どうなったのか」「公表されている以上の人々が処刑されているという噂は本当か」「プロテストは完全に終わってしまったのか」なんてことも肝心です。副大統領は答えなかったとしても、他の取材でそういった点までしっかり明らかにして欲しかったものです。

道徳警察がきれいさっぱり消えたのであれば、副大統領に「ということは、政府も道徳警察に問題があって、あれだけの抵抗が国民の間で高まった最初のきっかけは道徳警察の横暴にあって、国外勢力が理由ではないでしょう。それとも道徳警察には国外勢力の工作員が入り込んでいたのか?」と展開することもできただろうに。

 

 

イランの女学校に毒ガス攻撃が続いている

 

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この動画で、今も多くの人がチャドルやヒジャブをしていることがわかりますが、一切頭部を隠していない人たちもいて、髪の毛がはみ出ていたことで捕まって亡くなったマッサ・アミニのようなことはおそらくもう起きていない。ここを見ると、プロテストの効果が少しはありました。

では、完全に自由になっていて、それでもヒジャブを多数の人がつけいてるのは、直接的な意味での強制があるのではなくて、本人たちの美学として選択しているものなのかどうか。ではなぜカメラに顔を晒すことは怖がるのか。

それもこの動画ではわからないので、私の方から補足しておきます。

イランでは恐ろしいことが起き続けています。

 

 

 

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