女は高い声を出した方が得をすると思われている日本—得をするとしたらJKと接客業と声優くらい-(松沢呉一)
Jinjerのタチアナと葛西美空
現在、ウクライナのJinjerは全米ツアー中。
7月に入ってからは、あんまりいい動画がないですが、以下は7月13日のソルトレイクシティでのライブ。
前にMVを埋め込みましたが、この曲好き。タチアナのヴォーカルだけじゃなく、プログレっぽい展開も好き。
よくは見えないですが、タチアナが低音を出す時の様子は、葛西美空がハム太郎ボイス(ハムボ)を出す時に似てます。
つねにそうだとは限らないですが、首筋を緊張させます(0′26″〜)。
自然な地声を出している分にはそう疲れないですが、超低音を出すのも超高音を出すのも喉に無理がかかるのは事実だろうと思います。
タチアナは。デスボイスやシャウトではない普通の歌も表現力が豊かなのですが、それは葛西美空も同じ。音程や発声を変化させることで、一人で何役も使い分けます。
ここまでできると芸ですが、人はしばしば無意識のうちに声を使い分けています。
日本女性はなぜピッチを上げ気味で話すのか
前から言っているように私はいわゆるアニメ声があまり好きではないです。
大人の声優が子どもや動物の声をやるには高い声を出せることが望ましく、アニメ声の需要があるから、アニメ声の声優が存在しているわけで、そういう役柄で甲高い声を出すのは気にならないし、葛西美空のようにシャレでやっているのは笑えますけど。誰かを演じているわけではない声優が素の状態でアニメ声を出すとムカつきます。
地の声でアニメ声を出す人もいるので、「アニメ声=つくり声」ではないのですが、たいていは作ってます。つまりは、虚構の自分を演じているわけです。
ホロメンでも、時々地の声を出してしまって話題になります。
その場合は95パーセントくらい地声が低い。つまり、虚構の声を高く作っているのです。稀にキャラ作りのために地声より低くしているのがいますし、地声と言っている声が本当に地声なのかどうかという問題がありますが、声のピッチを上げているのは日本社会そのものです。
だから私はホロメンJPより、地声にツクリが少ないENの方が好きです。IDはその中間。
日本では役を演じる時だけでなく、「女の声は高い方がいい」という思い込みがあります。
男の声も高くなる状況はあります。暴漢に襲われて、「ギャー」と叫ぶ時は高音を出します。ラーメン屋や居酒屋の店員が「いらっしゃいませ」「またどうぞ」などと大きな声を出す場合は高音になります。店員がドスを利かせた低音になることはあまりない。ボッタクリ店で、金を出そうとしない客に凄む時やバイト君のミスを叱る時くらいです。
つまり、人は弱さを見せて、相手に警戒させないようにする場合は声を高くする傾向がありそうです。「高い声=子どもの声」だから、当然か。
対して映画で大企業の社長、警察署長、ヤクザの親分、大病院の院長、大臣などを演じる役者は声のピッチを下げ気味にするはず。実際には甲高い声の社長、署長、親分、院長、大臣もいるわけですが、イメージとしては声が低い方が威厳があります。圧倒的に力があるのに、声が高いのは宇宙人くらいか。
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