松沢呉一のビバノン・ライフ

買春者処罰はコストがかかりすぎ、かつ効果が薄すぎる—仁藤夢乃の発言は信用できない[資料編8]-(松沢呉一)

スウェーデン方式を模倣してはいけないとの警告を無視したフランスで起きたこと—仁藤夢乃の発言は信用できない[資料編7]」の続きです。

 

 

ブローニュの森の秘密

 

vivanon_sentenceテレビのドキュメンタリー「Les secrets du bois de Boulogne(ブローニュの森の秘密)」を観たのですが、今まで書いてきたことを裏づける事実がとらえられているのと同時に、今まで知らなかった事実も知ることができて、大いに参考になりました。

昨年投稿されているので、買春者処罰導入以降のブローニュの森の様子がわかるのだと期待したのですが、辻褄が合わないところがあって、エンドロールをよくよく見たら、小さく2010とのクレジットが入っていました。だったら納得。買春処罰導入前のものです。

自動翻訳では理解できないところもありますが、映像だけでも十分にわかります。

 

 

サマンサ、陽気です。顔を出している街娼は彼女だけです。おそらくサマンサは、ブローニュの森でトップクラスの人気があって、彼女がこの地の標準的セックスワーカーではないことをまず確認。

複数の女たちが集まっているところも見られますが、サマンサとその仲間は連れ立ってブローニュの森に出勤し、着くや否や離れ離れに。そうした方が客がつきやすいためです。彼女は車が通る場所でおおっぴらに声をかけて、交渉にもそれなりの時間をかけていますが、これは積極的勧誘ですから、確実に捕まります。罰金を払えばいいと割りきっているのでしょうし、最後の方でわかるように、勧誘罪の摘発は昼間に行われているようです。

トランスだとわかっている客もいるでしょうが、多くは気づいていない。暗がりでは絶世の美女に見えます。だから、トランス街娼たちは夜に出没しているようです。

 

 

ブローニュの森は上野公園の15倍

 

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昼間から、こうも多くの街娼が出没するとは私は思ってませんでしたし、この頃は人が頻繁に出入りするエリアでも商売をしているのが多かったようで、だから、日曜日に家族連れが遊びに来る前にコンドームを片付けるための清掃員が活躍。

しかし、目立ちすぎるので、買春者処罰が導入されて以降、昼の部は減っているか、もっと森の奥に引っ込んでいるはずです。

このドキュメンタリーだけではブローニュの森の規模がわからず、上野公園のようなもんかと思えてしまいますが、なにしろ競馬場かふたつあるくらいに広い。

調べてみたら、上野公園の広さは0.53km²なのに対してブローニュの森は8,46km²。15倍ほどあります。台東区の面積は10.11 km²ですから、上野公園をイメージするより、台東区全体が公園だと思った方がまだ近い。

当然、人がほとんど立ち入らないエリアもあり、買春者処罰以降、そういう場所に街娼たちは追いやられました。

サマンサが今も街娼をやっているかどうかわからないですが、ああも車の通りが多い場所で声をかけることはしにくくなっているはずです。彼女はいいとしても、客がそんなところでの誘いに乗らない。

彼女はひっきりなしにタバコを吸っています。昔っから街娼は喫煙者が多く、暗がりでもタバコの火が目印になるのと、「火を貸してくださる?」と声をかけてきっかけを作るためです。警察にも目をつけられるので、禁煙したのが増えているかも。

 

 

いかに売買春の摘発は手間がかかるか

 

vivanon_sentence昼間に2人か3人で組になってマウンテンバイクでパトロールしている警官たちは簡易なテントでいたしていると注意をして回っているだけで、ただ立っているだけの街娼は素通りです。

本腰を入れて勧誘罪で街娼を捕まえる場合は昼に9人のチームで動く。車の車種やナンバーを控え、交渉するところから、簡易なテントに入っていくところまで一部始終を記録する。

いかにこの摘発に手間がかかるかわかりましょう。ブローニュの森は昔っから青姦の名所であり、一般の人たちである可能性もありますから、セックスしている現場だけでは逮捕できない。

夜になると、確認も難しくなり、人が乗っている車は警戒されます。買春者を捕まえるにはさらに手間がかかる。

夜のパトロールでは、酒の違法販売やギャングの逮捕がなされていて、こちらは酒を大量に持っている人物が販売しているところを押さえれば逮捕。ギャングは銃や薬物を持っていれば逮捕。このギャングは何者であるのかは次回。

 

 

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