落合「松の湯」に久々に行ってきた—公衆浴場法の改正で事業譲渡が増えている?[新・銭湯百景21]-(松沢呉一)
「独り言で気味悪がられる客の対処—新・銭湯百景[20]」の続きです。
落合「松の湯」がリニューアル
毎週、バイト明けの月曜日は爆睡してしまいます。先週もU-17女子サッカーの試合結果を観たあと、ずっと寝てました。
サッカーと関連していそうですが、水球の練習をする場所がなくて困っていると聞いて、銭湯を紹介する夢を見ました。私も海パンを履いて練習に参加したのですが、浴槽は狭すぎて水球には向きませんでした。
「んなこと、やらんでもわかるべ」ってことですが、深さも足りないことは夢の中では何も問題になっておらず、起きてから、「気づけよ」と思いました。
その夢がきっかけで、「よし、松の湯に行こう」と思い立ちました。水球ができるわけではないですが、落合の銭湯です。前にも書いてますが、この銭湯は好きで時々行っていました。私の好きな「高度成長期に建てられて、今や凋落した銭湯」で、サウナは壊れて撤去されてました。水風呂は残っていて、壁に貝殻が埋め込まれた装飾も時代を感じさせます。
この水風呂は孤立した閉鎖空間になっており、中にいると深海の闇に沈んでいる気分に浸れます。言い過ぎですが。
この水風呂を除いて、三つの浴槽があり、それらは段差があって、上の浴槽から下の浴槽に湯が流れ落ちるようになっています。二段はあっても、三段になった立体的な設計の銭湯は珍しく、これがこの銭湯最大の特徴です。
一番上の浴槽には打たせ湯があって、「唄せ湯」と当て字が手書きで書かれています。経営者は演歌好きかも。
という銭湯なのですが、昨年行ったら休業していて、工事中で、看板も外されていたため、廃業したのか。しかし、組合のサイトにある廃業リストには出てません。
そうこうするうち、昨年11月にリニューアル・オープン。今年になって行ったのですが、その日は定休日で、別の銭湯に行きました。
✳︎「東京銭湯マップ」より現在の松の湯
初めて見たファミリーブース
以来、行きそびれていたので、火曜日に行ってきました。
通常、客が多くない午後6時台だったのですが、けっこう混み合ってまして、松の湯にこんなに客がいるのは経験がなく、リニューアルの効果は明らかです。
雰囲気は一新されていて、黒いタイルに暗めの照明。前とは路線違いの深海です。
私にとっては落ち着くようで落ち着かないですが、特徴だった段差が残されていたのが嬉しい。あれは趣向ではなく、建物の都合上、そうせざるを得なかったりするのかな。
さらに新規で露天風呂もできてます。上は半分以上塞がれていて、半露天といったところですが、ここは湯温が44度に近い43度くらいあって、湯温が低めの銭湯が増えている中、これも歓迎。
また、他では見たことのない趣向として、ファミリーブースが設置されていました。カラン2つが隔離されたところにあって、それだけなのですが、幼稚園以下の子どもだと、離れるのは不安でしょう。並んだカランを確保することができないほど、混むことはあまりないでしょうし、この日も親子がいたのですが、ファミリーブースは使ってませんでした。実際には使わなくても、ファミリーブースがあれば安心ではありましょうし、話題になるネタを用意するのは大事です。
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