吉原のソープランド殺人事件を持論に利用するあざとさ—仁藤夢乃の発言は信用できない[9]-(松沢呉一)
「「仁藤夢物語」の手本はスウェーデンや韓国ではなく中国—仁藤夢乃の発言は信用できない[8]」の続きです。
韓国・性売買特別法以外の仁藤夢乃のデタラメ
「仁藤夢乃が語る虚構とは全然違う韓国・性売買特別法の現実—仁藤夢乃の発言は信用できない[4]」で取り上げたツイートは全編デタラメであり、その中で、韓国の性売買特別法の正確な情報を説明するのが長くなってしまいましたが、残りを片付けていきます。
許せない事件。性売買女性が殺害されるのは何度目か。そのことをどれだけの市民が覚えているか。いつ殺されてもおかしくない状況で、生きるために今日も出勤するしかない女性がたくさんいる。
日本社会では買春があまりにも当たり前になっている日本では、こうした事件が繰り返されてもほとんどの市民が声を上げない。
韓国では性売買女性が殺されたらあらゆる女性団体が連帯して多くの市民が声を上げ、性売買防止法の制定にも至った。女性を買える、性搾取できる社会では女性の人権は蔑ろにされる。日本では買春客による殺害が繰り返されても性売買は合法化され、買う側の責任は問われることない。
「売春(←差別的な言葉)防止法」では買春は犯罪にならず、
女性のみが処罰の対象とされ続けている。北欧やフランス、韓国などのように、買春者処罰法(女性が性売買から抜け出して暮らせるよう支援し、買春者を処罰する)が必要。女性の体を尊厳を売り(売るのは女性自身ではなく業者)買いする社会を変えなければならない。
打ち消し線をつけたのは、ここまでにデタラメであることを説明してきた部分です。フランスが飛んでいますが、フランスの現状については長くなるので、改めて「資料編」として出す予定です。これを読めば仁藤夢乃はセックスワーカーの命なんぞ考えていないことがはっきりすると思います。彼女にとってセックスワーカーの死は利用する対象でしかないと言っていいでしょう。
店舗型性風俗店での殺人事件は極少ない
では、残りを片付けます。
冒頭で「許せない事件」と言っているのは、吉原でソープ嬢が客に殺された事件のことです。
「赤線殺人事件—「店舗は安全」と警察も認める」に書いたように、2003年にも吉原のソープランド店では殺人事件が起きています。それ以降、店舗型性風俗店の店内で起きた殺人はなかったはずです。私が知らないだけかもしれないですので、知っている人がいたらご教示ください。
その前となると、いつあったのかわからない。そのくらい店舗内での殺人事件は珍しい。
赤線時代にまで遡ると、十数年の間に何件か確認できますが、これは当時の遊び方が朝までが基本だったためです。遊廓で無理心中という名の殺人事件が起きていた事情と同じです。
夜遅くなれば客と一緒に寝ますし、その時は店の人たちや同僚たち、その客も寝ています。声を出してもすぐには人は来ない。気づいた時にはもう死んでいる。
対して現在はそんな遊び方は風営法上の店舗型性風俗店ではできないですから、声を出せば他の個室にもフロントにも聞こえ、すぐさま従業員が駆けつけます。ドアが薄いので、音が筒抜けです。
2003年の事件や今回の事件のように、自分も死ぬつもりで殺人を実行するのがいるわけですが、数十年に一回という程度です。
では、仁藤夢乃が書くのはいつもの戯言でしょうか。実のところ、無店舗型の性風俗では店舗型の比較にならず多数の犯罪が起きています。以前からホテトル嬢が殺される事件はありましたが、無店舗型が認められて以降は事件が急増。
ラブホだったら、ソープランドより壁やドアが厚く、窓を開け放していない限り、外に音や声が漏れにくい。札幌すすきのの頭部切断事件では、殺して首を切っても気づかれなかったわけですし、自宅でも音や声が近隣に届かないことはあるでしょう。
これについてはデータの裏付けのない脳内イメージでしか語れない、あるいはわかっていても都合の悪いことはなかったことにする仁藤夢乃と違って、SWASHさんが調査しています。警察庁が集計しているわけではないので、正確な件数まではわからないのですけど、調べようとする姿勢が仁藤夢乃とは違います。
日本の性風俗営業は、目につく店舗型から、目につきにくい無店舗型へ移行しています。やれ「子どもが看板を見たらどうするのか」「外国人に見られたら恥ずかしい」みたいな批判に対応した結果です。
これが犯罪を増加させたのであって、そこを踏まえて、問題の改善を求めてきたのがSWASHであり、対して適当なことを書き殴っているのが仁藤夢乃です。
※2023年5月5日付「NHK NEWS WEB」 第一報なので「意識不明」となってます。
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