「法に触れなければパクっていい」という考え方にどう対抗するか—文化盗用とパクリ[9]-(松沢呉一)
「江崎グリコが韓国ロッテを訴えた二件の裁判—文化盗用とパクリ[8]」の続きです。
「法に触れなければパクっていい」と考える企業
食品に関する権利主張の難しさがグリコとロッテの裁判でよくわかります。お菓子の箱としては特殊と言えるパッケージまで真似られて、やっと勝てる。通常のパッケージで、色味が似てるという程度では勝てない。パクリをよしとすることを創業者が堂々語っていても、「法に抵触しない範囲でのパクリ」の意味だと言われると、それが根拠にもならない。
小学生だった私がロッテのやり方に不快感を抱いたのは稀な例かもしれないですが、時を経るとともに、「法に抵触しなくても、パクリは恥ずかしい」という意識が浸透し、日本国内では露骨なパクリはやりにくくなってか、ロッテは日本でヒットした商品を韓国でパクることを今も続けてます。
日韓の行き来が盛んな時代になって、インターネットで簡単に情報が伝わるようになり、韓国でもパクリであることがしばしば批判される時代になってもなおパクリ続けているのは天晴れと言えなくもない。
「法に触れなければパクっていい」という方針を、日本だけで約5千人の従業員を擁する大企業がやり続けていることが私には理解しにくいですが、これは他者に強いることのできない私の感覚。そんなものでしかないですが、スポーツにおいて、フェアじゃないプレイをした場合、ルールに反しなくとも批判してもいいのと同じく、あるいは皆が列に並んでいる時に割り込みをすることが法には触れなくとも嫌悪していいのと同じく、コイサンズ社やロッテを私は「パクリだ」と言い続けますし、「ロッテ 歌のアルバム」を観ません。もうやってねえよ。
もちろん、いい気になって法に抵触するようなことをやった場合はすかさず訴えるべきだと考えます。こういうことで訴えることの方が企業イメージを悪くすると考える企業が日本には多そうですが、韓国企業はしばしば自社で苦労の末に開発したとの嘘を吹聴し、日本がパクったと信じている人たちがいますから、放置する方が企業イメージを損ないます。
✳︎「地元ポッキー」なんてあるんですね。応援します。
日本の「鯛あられ」は大正時代から
あといくつか、見ておきます。
JINさんが挙げている「日本が米国からパクった例」の2番目に出てくるのは森永製菓の「おっとっと」です。「おっとっと」は、キャンベルスープ社傘下のペパリッジ・ファームが発売している「Goldfish」をパクったと言いたいらしい。
「Goldfish」のルーツはスイスのカンブリーが1954年に出した「the Goldfish Crackers」で(現在の商品名はこちらも「Goldfish」)、それをもとにペパリッジ・ファームが1962年に米国で発売。この前にペパリッジ・ファームはベルギーのメーカーのお菓子を米国で発売しており、「権利を買った」としていますし、ペパリッジ・ファームは自社のサイトで、スイスがオリジナルであることも記載していますので、こちらも権利をクリアしていそうです。
1997年にペパリッジ・ファームは、ナビスコが同類の魚型スナックを出したことに対して訴訟を起こして勝訴。ペパリッジ・ファームは立体的形状の商標登録をしているのでしょう。
「おっとっと」は1982年発売ですから、「Goldfish」をパクったように見えましょうが、日本には魚型のあられが古くからあります。私は「鯛あられ」が好きで、よく買いますが、あれは相当古いでしょ。検索してみたら、大正時代にはあったようです。
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