松沢呉一のビバノン・ライフ

韓国のテレビ局が韓国人YouTuberデボちゃんの動画を正反対の主張に無断で使用—文化盗用とパクリ[付録編]-(松沢呉一)

文化盗用とパクリ」シリーズのスピンオフです。

 

 

デボちゃんの動画が韓国のニュースに無断使用された件

 

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デボちゃん、激怒。

 

 

デボちゃんは意外にヒゲが濃いな。

最近は職質をされる頻度がうんと落ちてますが、私も若い頃はよくありました。職質のチェックポイントのひとつは違法薬物の所持であり、初老でコカインや覚醒剤をキメているのはそんなにはいないですから、年配には声をかけないのは当然かと。

また、不法滞在者の発見も大きなチェックポイントです。未だ理解してない人も多いようですが、日本では不法滞在は犯罪です。しかし、不法滞在を見つけるのは難しい。

一昨年、静岡市で、34年8ヶ月不法滞在していた姉と、26年7ヶ月不法滞在していた妹の韓国人姉妹が職質で逮捕されています(下のSS参照)。姉妹は観光で来日して、そのまま残留。姉が先に実行し、「バレないから、あんたも来なよ」と妹をそそのかしたか。

彼女らはおそらく職質の多い夜遅くは出歩かないようにしていたのでしょうが、ひとたび不法滞在を許すと、10年でも20年でも居座れることを示しています。

不法滞在が犯罪ではない国からすると意味がないように思えるかもしれないですが、職質は、犯罪者である不法滞在者を発見する有効な方法であることは否定できません。

しかし、もっとも職質されるのは自転車じゃないですかね。2パーセントか3パーセントか知らないですが、盗難車が一定の率で混じっているのでしょう。その数字を根拠に、通行人より自転車を重点的にチェックするのは不当か?

韓国のテレビが取り上げている日本の裁判は、「人種や肌の色、国籍などを理由に相手を選ぶ職務質問は差別である」というものですが、日本人と外国人を等しく職質すれば納得か? 見た目で若い世代を重点的に職質するのは差別か?

これについては、しっかり調べて、時間をかけて考える必要があるので、ここでは突っ込まないことにします。

✳︎2024年4月15日付「NHK NEWS WEB」 この裁判は外国人に対して重点的に職質することを争うものであり、その点でもデボちゃんの動画を持ってくるのは不当。

 

 

どこをとっても著作権法違反

 

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元のニュース動画が見つからないので、デボちゃんが引用している範囲で見ていきます。

それ自体が報道対象になる場合、無断で著作物を使用するのは引用の範囲です。例えば、「日本で超絶人気の韓国人YouTuberが、韓国のニュース番組で映像を無断使用されたと激怒」あるいは「人気韓国人YouTuberデボちゃんは意外にヒゲが濃い」という報道をする際にこの動画を使用するようなことです。その際に、デボちゃんの名前や出典を明記するのは必須。

そんなことはないだろうと思いつつ、韓国の法律は違うかもしれないので、韓国の著作権法を見てみましたが、第37条に「出所の明示」が定められています。

その点、デボちゃんが問題の映像を出しているのはそれ自体が論評する対象ですから、引用してよし。ただし、この場合もテレビ局名や番組名を出す必要があります。今からでも、デボちゃんは概要欄に書いておくのが賢明です。

問題の報道では、資料映像としての使用であり、日本のテレビでは「資料映像」「イメージ映像」というテロップを入れますし、自社で過去に撮影した映像を使いますので、権利上の問題は生じません。それでも、テロップを入れて、今回改めて撮ったものでなないことを説明します。

SNSで動画が上がっている」という一言はありますが、 YouTubeはSNSではありませんし、その後の動画がこの説明に該当するかどうかもわからず、あたかも自分らで取材をしたかのようにも見えます。姑息。

✳︎2022年3月13日付「読売新聞

 

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