米沢興譲館/2年生バッテリーが夏を面白くする【2023夏の山形大会・私的注目校レポート】
夏の山形大会は鶴岡東や日大山形、山形中央といった上位校を中心に優勝が争われるのはたしかだろう。だが、出場校の中には野球に対する姿勢や工夫、個性が光るチームも存在。ときには上位校に勝ってしまうこともある。そんな私的注目校の一つとして米沢興譲館を紹介したい。
■春季県大会で山形中央に善戦
「友一が今日はランナーいらないって言うから、無しでいいよ」
監督である吉田真悟の声がグラウンドに響く。米沢市郊外にある米沢興譲館のグラウンドではノックが始まろうとしていた。「友一」とは、主将・三浦友一のこと。米沢興譲館の練習は、三浦を中心に3年生がメニューを決め、吉田がチェック、ときには助言によってアレンジする形で行われている。「テスト期間中で久しぶりの全体練習。明日からの週末は練習試合ですし、夏の大会も近い。それを考えてランナーをして足に疲労を溜めるより、全員が守備について連携などを確認する方がいいと判断しました」とは三浦の意図である
「高校野球として甲子園を目指すのはもちろんですが、その先、国公立の大学で野球をすることも視野に入れているんです」(吉田)
米沢興譲館は置賜地区随一の進学校。卒業後は国公立大に進む生徒が多く、野球部員も例外ではない。いわゆる私立を中心とした野球強豪大とは異なり、国公立大の野球部は、学生によって自主運営されているケースが少なくない。長井高から金沢大と投手としてプレーした吉田も、そんな大学時代を過ごした。
「自分たちで考えて、金沢学院大など私立の強豪にぶつかっていくのが本当に楽しかった。生徒たちにも、将来そんな経験ができるような指導も考えているんです」

チームを引っ張る主将・三浦友一。1番打者として初回から勢いをつける存在である
そんな狙いがあっての練習メニュー作成。当然、高校の段階でも養われた「考える力」は発揮される。
春季県大会2回戦、米沢興譲館は「二刀流」武田陸玖が牽引する山形中央との対戦となった。武田は登板せず野手のみの出場ではあったものの、先制、逆転と中盤までは互角の戦い。最後は4対6で敗れたが優勝候補を慌てさせた。光ったのは先発・鈴木瑠騎也と捕手・青木誓己の2年生バッテリー。「丁寧な攻めが見事だった」と相手の奈良崎匡伸監督が試合後に漏らすほど、山形中央打線を苦しめた。夏も何かやってくれそうな期待感を抱かせるには十分な試合だった。
■「力とアイデアを試してみた」2年生バッテリー
鈴木と青木は、山形中央戦を自分たちの力を試す絶好の機会ととらえ、試合に臨んでいた。青木が言う。
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