『江ノ島プリズム』 -青春映画とタイムトラベルは相性がいい (柳下毅一郎) -3,868文字-
監督 吉田康弘
脚本 小林弘利、吉田康弘
撮影 千足陽一
音楽 きだしゅんすけ
出演 福士蒼汰、野村周平、本田翼、未来穂香、吉田羊、赤間麻里子、西田尚美
「青春は、いつも、時をかける……」というわけで青春映画とタイムトラベルは相性がいい。二度と取り戻せぬ青春だが、タイムトラベルすればそれがもう一度手に入る。で、だいたい最後にはせつない別れが待っている。それがタイムトラベル青春映画。本作の場合、原案・脚本の小林弘利が元ジュニア小説作家でそんな話ばっかり書いてるんで、当然ながら……
修太(福士蒼太)、朔(野村周平)、ミチル(本田翼)の三人は幼なじみ。朔は心臓が弱く、修太はスポーツマン、ミチルは男勝りの元気少女とタイプは違うが、湘南の地で一緒に虹を見ながら育った。高二の冬、大事なバスケの試合前、修太はミチルから呼び出され、朔宛の手紙を託される。
「自分で渡せよ、そんなの……」
「いやあそれができないのが乙女心なのよ。じゃあ、試合のあと渡してね!」
ミチルを憎からず思っていた修太はショックながらも手紙を受け取り、学校に向かうがその途中で自転車のチェーンが切れてしまう。仕方ないので朔の家によって自転車を借り、そのついでに手紙も渡す。間に合いはしたものの、得意のスリーポイントシュートはことごとく落として試合に負けてしまう。そして試合が終わると朔は死んでいた。
は?
実はミチルは誰にも言わずに英国への留学を決めており、手紙でそれを告白していた。予定通り試合のあとに手紙を渡していたら飛行機に乗ったあとだったはずなのだが、修太が早くに手紙を届けてしまったせいで、朔は見送りに間に合うことになってしまった。そして江ノ電の駅に急いだのだが、なんせ自転車がないので走るしかない。心臓の弱い朔は発作を起こして……という風が吹くと桶屋が儲かる的展開で朔は帰らぬ人になってしまったのだった。
二年が過ぎた。
自責の念に駆られた修太は葬式にも出席できずにいたが、三回忌の法事にはようやく顔を出す。朔が死んだときのまま、時間がとまった部屋。朔の母から「形見分けに、なんでも持っていってよ」と言われた修太が本棚を見ると、そこには『君もタイムトラベラー』という本があった。付録の腕時計を身につけて行きたい時代のことを強く念じるとその時代にタイムトラベルできるのだ。半信半疑ながら時計をつけて江ノ電に乗る修太。朔が死ぬ前に戻って、彼を助けたい……江ノ電がトンネルに入って……明かりの中へ抜けると……
目の前に朔がいた。修太は二年前にタイムトラベルしたのである。それは朔が死ぬ前日だった。今日のうちにミチルからイギリスに行くことを告げさせれば死なないはずだ! 朔と一緒に喪服姿で学校に行った修太だが、ミチルは「終業式だから大掃除!手伝って!」と二人をこきつかって学校中の掃除をさせる。実は二年前、修太は朔に食べさせられたキノコのせいで食あたりを起こし、トイレにこもりきりだったのである。翌日の試合でシュートが決まらなかったのも体調不良のせい。掃除の最中、理科準備室でプリズムを見つけたミチルは窓に大量に吊して部屋に虹をかける。
「わたし、この光景、一生忘れない」
言うほどきれいでもないし、言ってる本田翼もそんなに魅力的じゃない(実はこれが本田翼だとは言われるまで気づかなかった……)。だがそこで修太は何も知らないバスケ部員から頭にボールをぶつけられて昏倒してしまう。
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