『劇場版 TOKYO MER 走る緊急救命室』　こいつら現場で手術したがりすぎ。危険な手術をやりすぎて脳から変なものが出ているとしか思えない

2023年05月18日 18時01分　
カテゴリ：殺しの映画レビュー
タグ : ジェシー • フォンチー • 中条あやみ • 仲里依紗 • 佐野勇斗 • 小手伸也 • 平井大 • 斎木達彦 • 杏 • 松木彩 • 橋本さとし • 櫻井美希 • 渡辺真起子 • 石田ゆり子 • 羽岡佳 • 菜々緒 • 要潤 • 賀来賢人 • 鈴木亮平 • 鶴見辰吾 • 黒岩勉

→公式サイトより

『劇場版 TOKYO MER 走る緊急救命室』

監督　松木彩
脚本　黒岩勉
音楽　羽岡佳、斎木達彦、櫻井美希
主題歌　平井大
出演　鈴木亮平、賀来賢人、中条あやみ、要潤、小手伸也、佐野勇斗、ジェシー、フォンチー、菜々緒、杏、鶴見辰吾、橋本さとし、渡辺真起子、仲里依紗、石田ゆり子

TOKYO MERは東京都知事の肝いりで設立された走る救急治療チーム！　手術もできる滅菌室を備えたERカーを駆使して患者発生の現場で即応、一人の死者も出さない！　という触れ込みのドラマの劇場版。舞台は……横浜！　いきなりよそのシマ荒らしてるじゃねーかよ！　というので思わず見にいってしまったんだが、実際の映画ははるかに強烈であった。ERカーどころか事故現場で切った貼ったの手術三昧。もはや滅菌室とか必要なくない？　ブラックジャック魂というか、人間を切ってつなげば動くロボットだと思ってるサイコパス精神のようなものを感じてしまった。昔から、外科医に対してはいわれない偏見を抱いているのだが、それをひたすら肯定してくれるような。まあとんでもない医者もいたもんだ。なお、脚本の展開とセリフはChatGPTが書いたかのように陳腐で馬鹿馬鹿しいものだなあ、と思ったが、これは決してChatGPTを貶めようとするものではありません。

映画はじまるといきなり空港で炎上している飛行機。消防活動に懸命な消防士、慌てて逃げる乗客の流れに逆らって機内に駆けこむ者がいる。「待っているだけでは救えない命がある」をモットーに、攻めの医療で患者を救うTOKYO MERのチーフドクター喜多見幸太（鈴木亮平）だ。「ＭＥＲがきてくれたー！」とわかりやすく説明ゼリフで喜ぶ乗客たち。続いて弦巻比奈（中条あやみ）らＭＥＲのメンバーが次々に乗りこみ、その場で動けない乗客のトリアージをおこなう。喜多見は子供の気胸を見るや、「この場で手術します！　マオちゃん、がんばって！」といきなりメスを取り出して切開、無事子供を救う。だが、飛行機の翼からは燃料が漏れており、今にも引火して爆発するかもしれない。無事乗客が全員避難しおわり、最後に降りようとした客室乗務員がばったり倒れる。「まずい！　腹部に内出血がある！　この場で手術しないと間に合わないかもしれない！」というわけでERカーを瓦礫が散乱する中、爆発寸前の飛行機の近くまで持ってきて、そこで手術することを決意する。

流れるように無理矢理現場で手術しまくるTOKYO MERの流儀が紹介されるわけだが、そもそも喜多見の危険箇所に積極的に突っ込んでく姿勢はどうなんだ。実はドラマ版のころからそこはさんざん突っ込まれているらしいのだが、やはり医療従事者が積極的に危険地帯に飛びこむのは二次災害の予感しかしない。そしてこいつら現場で手術したがりすぎである。なんか危険な手術をやりすぎて脳から変なものが出ているとしか思えない。火が出ている機内でトリアージとか応急措置とかしてるのおかしいだろ！　そして超高価なERカーを思いっきり危険にさらすことに、赤塚都知事（石田ゆり子）すら何も言わないのはさすがにどうかしている。肝胆相照らす中の消防隊員千住（要潤）の協力によって、無事爆発寸前に手術完了。

「……今回の出動では軽傷者xx名、重傷者xx名、死者は……（思い入れたっぷりに間をとって）……ゼロですっ！」

　わーっ！と司令室が喝采に包まれてめでたしめでたし。ところが喜多見はというと、実は両親との食事の約束をすっぽかして出動していたのだった。スタッフに言われて思いだし、慌てて家に帰る喜多見。もはや両親の姿はなく、臨月の妻千晶（仲里依紗）は黙ってスーツケースに荷物を詰めている。

「……実家に帰らせていただきます！」

　仕事人間の喜多見、臨月の妻をほっぽらかして電話一つせず、連日詰め所に寝泊まりして一ヶ月のあいだに帰ってきたのはわずか四日！　この二人、一度結婚したが千晶が愛想を尽かして別れ、五年前に再婚したのだという。「心を入れ替えて今度こそ大事にします！」と約束しといてこの始末。もうさっさと離婚したほうがいいよ！　さらに問題なのが喜多見の態度で、これは千晶に対するときだけではないのだが、相手に正論を言われると反論せずにっこり笑って「ですよねー」と同意し、だがそれで行動を変えるわけではない。とりあえず相手の言うことに同意してその場をやり過ごすことしか考えていない様子で、実にサイコパス的だと思わずにいられない。これ、まさかそんなつもりでキャラクターを造形しているとは思えないのでたまたまなんだろうが、喜多見の興奮中毒だとか、生命を軽視し、人間を修理可能な機械のように扱う態度とか、何もかもサイコパスの特徴にあてはまって怖いんだよ……