『STAND BY ME ドラえもん』 ドラえもんは未来の圧倒的科学力により古代人を蹂躙する神か?(柳下毅一郎) -2,062文字-
『STAND BY ME ドラえもん』
監督 八木竜一、山崎貴
脚本 山崎貴
音楽 佐藤直紀
ドラえもん3D! 誰のために作るのかドラえもん3D、「すべての、子ども経験者のみなさんへ」「いっしょに、ドラ泣きしません?」というコピーから想像するところでは、ドラえもんファンだった大人のノスタルジーに訴えかけようという戦略のようで、まあ3D特別料金を払ってまでこれ見たいか?と思ったが、映画はヒットしているそうである。さすがはありもしない世界への郷愁をかきたてて泣かすのが得意な山崎貴監督である。
『ドラえもん』のアニメ映画シリーズは毎年順調に新作が制作されており、たいへん評価が高いものもあると聞く(残念ながら見たことなし)。本作『STAND BY ME』はそれとはまったく別物として作られているので、原作の有名エピソードをつぎはぎするかたちで、ドラえもんとのび太の出会いから別れまでが描かれる。ちなみに原作第一話「未来の国からはるばると」、「雪山のロマンス」、「のび太の結婚前夜」、「さようならドラえもん」の四話である。まあドラえもんくらいになれば、アニメも見ておらず漫画も読んでなくても設定とキャラクターぐらいは知っている、という人もそれなりにいるのだろう。で、その人たちが「泣ける」ストーリーがこれだというんだけれど……
ドラえもんサーガが長い歴史を持ち、その中で徐々にのび太や仲間たちのキャラクターも変化していったことくらいは、原作にまったく興味のないぼくでも理解している。だから怠け者でおっちょこちょいでぐうたらで……な存在だったのび太もそれなりに努力もし、やればできる人間へ変化していったのだろう。だが、その変化を1時間40分ほどの時間で語り尽くそうというのはどうなのだろうか。これ、原作からのび太としずかの結婚エピソードが選ばれているせいもあって(どうもそこらへんが『ドラえもん』の中心エピソードとされているらしいことにも違和感があるのだが)、のび太が嫌な奴に見えてしまうのだ。
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