『海にのせたガズの夢』 「食、人、文化、そして自然……その魅力を教えてくれたのは一人の少女でした」 女子高生! 映画作り! 祭り!と町おこし映画のすべてが揃ったテンプレ作品
→公式サイトより
監督・脚本 矢口鉄太郎
総合プロデューサー 和田敦也
撮影 篠田力
音楽 岡出莉菜
出演 神谷えりな、宮前杏実、小松直樹、小南光司、三輪晴香、ねづっち、赤井英和
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後になってふりかえってみると、あの日からすべてが変わった。そんな日がきっとある……
これまた熊野発の地域おこしムービー! 和歌山映画二連発! と思ったらこちらは三重県熊野市であった! なんか地元にとってはなかなかに線引きでもめてそうな案件……そういうわけで「熊野市を舞台とした、女子高生の夢を追いかける姿を描いた青春ムービー」。女子高生! 映画作り! 町おこし! 祭り! とすべてが揃った町おこし映画のテンプレみたいな作品である。監督は尾鷲市出身の新人矢口鉄太郎なのだが、どうやら総合プロデューサーの和田敦也というほうが曲者のようで、同じく三重県を舞台にした『ルート42』や地方映画きっての闇案件『土佐の一本釣り 久礼発17歳の旅立ち』のプロデューサーとしてすでにこの界隈(ってどの界隈だ!)では知られた名前だったりする。ヒロインには仮面女子の神谷えりな。彼女が演じるのはガズ祭りの主役である「ガズ」という巫女役を三年連続でつとめている鄙には稀な美少女。ちなみに「ガズ祭り」というのは実際の二木島祭りをモデルにしたものだという。
女子高生まひろ(神谷えりな)は同級生たちと映画同好会で自主製作をしている女優志願の少女である。今日も今日とて服を着たまま桟橋から海に飛びこむ活動をしている……と、その姿を撮っている男が。若手映画監督の杉原嘉人(小南光司)である。
「怖くないの?」
杉原は熊野市のPR映像を撮る仕事を請け負って、熊野に滞在していたのだった。それを知った映画サークルのサチ(宮前杏実)は
「わたしたちに映画の撮り方をおしえてください!」
と強引すぎる無茶ぶり。杉原も助平心を出して、彼女たちの映画づくりに付き合うことになる。途中、撮影しているところを変態とまちがえられて(そう間違ってないような気がする!)まひろの父親(赤井英和)にぶん殴られる一幕などあるも、楽しく映画ごっこは終了する。まひろは杉原を「青の洞窟に行きましょう! 紀和町の虫送りがいいですよ!」と地元観光スポットに案内しまくり、映画の観光パートもクリア。というわけであっという間に文化祭がやってきて映画の上映となる。
サチたちが撮っていたのは『夜に二人で見た星空』という恋愛映画。図書室で手の届かないところにあった本を取ってもらったことから二人は出会うのだが、少女は病魔に犯されていたのであった……みたいな青空映画である。こんなところにまで青空映画の魔の手が伸びていたのか……と戦慄することしきり。上映は無事終了するも、まひろは相手役の男子アキナリ(小松直樹)が好きだった同級生女子から嫌味を言われるなどさんざんな目に遭う。打ち上げでも「これからもみんなで一緒に映画を作れるといいね」と言ったら、アキナリから「オレたちのやってることなんて映画の真似事やん」と返されて大ショック。わたしは真剣だったのに……! そんな帰り道、目出し帽をかぶった二人組に襲われる。彼ら、実はアキナリを好きだった同級生女子のパンツを盗撮しようとして彼女につかまり、かわりにまひろのパンツを撮ってくるように命じられたのである。なんかものすごく低レベルの復讐をされてるんですが。
「これで相殺するんや!」
「罪に罪を重ねてるだけやんか」
で、まあギリギリのとことでアキナリに助けられるわけだけど、二人から「おまえ見られるの好きなんだろ!」とか言われたのが大ショックで、家に引きこもって学校に来なくなってしまう。男やもめの赤井英和は「こういうとき、どうしたらええのかわからんのや」とおろおろするばかり。下級生ユカ(三輪晴香)ただ一人が
「わたしらの映画はあれで終わりですか!」
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