柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『占いゲーム』 ホラーでもスリラーでもないしサスペンスでもないゲーム映画でもない…… これはいったいどういう罰ゲームなのかと思ううちに気が遠くなり映画は終わった

 

 

公式サイトより

占いゲーム

監督・脚本・原作・製作総指揮 寺西一浩
音楽 のぐちとしかず
主題歌 寺西優真
出演 寺西優真、太田奈緒、北乃颯希、八木優希、久田莉子、日向野祥、あおい咲、小嶌宣希

 

とある館……というかごく普通の一軒家に、曰くありげな連中が集まってくる。ツナギ姿の受付の二人、板倉(日向野祥)と山本(八木優希)から名前と能力を聞かれ、それぞれに名前と占いの能力を告げていく占い師たち。家にとりついた悪霊を祓ってくれたら一億円という懸賞金に吊られて、館の主からの招待状に応じて集まってきた胡散臭い面々だが、「悪霊を祓うスマホアプリを開発してます!」とか「妖精の生まれ変わりです」とか「ベリーダンスで魔を祓います」とか素面では相手できないタワゴトばっかりの自称「占い師」に受付の二人も食傷気味である。だが監視カメラで見ている館の主アキラ(寺西優真)は満足げだ……そう、東京~ここは硝子の街~ほかで知られる国際派映画人(モナコ国際映画祭受賞監督)寺西一浩氏の新作はインチキ霊能力者と復讐鬼の対決を描くゲーム・サスペンス、と言いたいところなのだがその実体は……なんと言えばいいかわからないのだがまちがいなくホラーでもスリラーでもないしサスペンスでもない。ゲーム映画でもない。じゃあなんなのかというと……そこには何もない。まさに無。以下はその無に評者がどうつきあったかの記録である。

 

 

さて、九人の(嘘くさい)霊能力者が集まったところで板倉と山本から事情説明がある。「ではこれから呪いの説明します……」と言ったところで音声が消えて、戻ってきたと思ったら「……というわけでこの屋敷は悪霊に呪われているのです」。そこ省略かよ! 斬新だな! そこで別室のアキラがボタンを押すと、部屋の明かりが点滅し、地震でも起きたかのように揺れる。悪霊の仕業だ!と盛り上がるインチキ霊媒たち。目を爛々と光らせ、ケタケタ笑いながらボタンを押しまくるアキラ。なんでそんなに楽しそうなんだ! ほどなく弁護士金石(太田奈緒)が到着し、ただの暇人リョウ(北乃颯希)と三人揃ったところで事情が説明される。九人の「占い師」たちはもちろんみな偽物で、彼らはアキラの父親を騙して全財産を奪いとった詐欺師たちだった。アキラは詐欺師たちを司直の手にゆだねるため、集めた詐欺師たちに騙す意志があったことを証言させようと考えたのである。そのために屋敷に取り憑いた悪霊の話をでっちあげたというのだが、そもそも詐欺師たちがこの餌に食いついてこなかったらどうするつもりだったのか。そして詐欺師同士は一部つながりあっていて、カモを紹介したり融通しあったりしているというなら、そいつらを一同に集めた時点で詐欺師のほうも呼んだ側の思惑がわかってしまうのではないか。そして九人(うち八人は女性)の詐欺師に次々に騙されたという父親のほうも、ちょっと問題があるんじゃなかろうか。助平心などない真面目な人だったのに……とアキラは主張するんだが、それにしてはあまりに色仕掛けしかない詐欺師に引っかかり過ぎなのではないか。

 

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tags: あおい咲 のぐちとしかず モナコ国際映画祭 久田莉子 八木優希 北乃颯希 太田奈緒 寺西一浩 寺西優真 小嶌宣希 日向野祥

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