柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『スパイスより愛を込めて』 ゴーゴーカレー会長「カレーの映画を作っては?」。すかさず地方映画マエストロが本領を発揮! 金沢のスパイス女子高生の活躍を描くカレー映画。

公式サイトより

スパイスより愛を込めて

監督 瀬木直貴
プロデューサー 中西康浩、宮森宏和、瀬木直貴
脚本 アラン・スミシー
撮影 岡田賢二
音楽 高山英丈
主題歌 あたらよ
カレー監修 一条もんこ
出演 中川翼、茅島みずき、速瀬愛、坂巻有紗、福山翔大、田中直樹、横山めぐみ、萩原聖人、田中美里、加藤雅也、元谷芙美子

なんと脚本アラン・スミシー! ハリウッドで活躍する映画監督スミシーのこれは初日本映画か? もちろん皆さんご存知のようにアラン・スミシーとは何らかの事情で映画監督が自作に名前を出したくなかったときに使用するDGA(全米監督協会)公認の匿名名義のことである。したがって本来は監督以外は無意味なのだが、最近では脚本家等でも名前を出したくない場合にこの名前を使うことがあるそうだ。だがしかし、ここは日本である。いったい誰が、何を不満に思って「アラン・スミシー」なんて名前を使うことになったのか、気になってしょうがないではないか!

そんな本作、地域映画のプロ(日本各地を渡り歩いてその土地の地方映画を撮る人)瀬木直貴(カラアゲ☆USA恋のしずく)が石川県金沢市を舞台におくるカレー映画、なんでも金沢ゴーゴーカレーの宮森会長から「カレーの映画を作っては?」と誘われたことがあったらしく、すかさず地方映画マエストロの本領を発揮してカレーの街金沢を舞台にしたカレー映画を作ったというわけである。ゴーゴーカレーばかりがフィーチャーされるわけではなく、他のカレー店も登場するのだが、特筆すべきはアパ社長カレーも取り上げられて、アパ社長こと元谷芙美子氏も特別出演していること。すっかりアパに乗っ取られた格好だが、金沢の人はそれでいいのか!?

 

 

さて、それは新型ウィルスの蔓延によってすべてが変わってしまった世界。日常は失われ、それとともにカレーも消えた。新型ウィルスにはカレーが効くという噂が広まったためにカレーの買い占めが起こり、海外との貿易も途絶えたためにスパイスがいっさい入ってこなくなり、カレーがこの世から消えてしまったのだ。そして一年……

ってなんだよ! SFかよ! さすがは世界的脚本家アラン・スミシーが考えたストーリーとしか言いようがないびっくりSF。主人公はゲイの高校生なのだがストーリー上はほとんど何も意味もなく、もっぱら語られるのはスパイス研究をしていた学者である父(萩原聖人)の汚名を晴らそうとするスパイス女子高生(カルダモンのパウダーを嗅いでキマっている)の活躍を描くカレー映画。いや、いったい誰がなんでこんな話を作ろうと思ったのか、そしてその過程のどこでアラン・スミシーが映画を乗っ取ることになったのか、謎は深まるばかりなのである。

 

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