柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『銀幕の詩』 暴力団を追いだした兵庫県丹波市が、組事務所の土地建物を映画館として改装。その顛末を描いたこの映画のターゲットは東京都民1200万人!

公式サイトより

銀幕の詩

監督・脚本 近兼拓史
撮影 畠岡英隆、近兼拓史
主題歌 ワタナベフラワー
テーマ曲 KAZZ&柿原千春
ナレーション 島本須美
出演 柴田由美子、松岡智子、一明一人、とみずみほ、澤田敏行、サニー・フランシス、くっすんガレージ、きくり

 

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それは恐竜で町おこしでおなじみ兵庫県丹波市から届いた一風変わったニュースであった。2014年、暴力団追放運動によって地元自治会は山口組系の暴力団を市内から追いだしたのだが、その際に組事務所の土地建物を購入した。使い道に困っていたこの建物を、2017年に当地にゆかりのある映画監督近兼拓史氏の提案で映画館として改装することになり、2021年についにヱビスシネマ。としてオープンした。その顛末を描いたのが本作『銀幕の詩』なのである。

そう、もちろん近兼拓史監督とはたこやきの詩などで知られるジェネリック映画(=〈下町の詩〉シリーズ)の雄。恐竜の詩 に引き続いての丹波市発映画となる。もちろん完成した映画はヱビスシネマ。で上映。なのでヱビスシネマ。で鑑賞したいのはやまやまだったのだが、どうしても都合がつかず神戸の映画館での鑑賞となった。だが見ているとやはりヱビスシネマ。に行けばよかったと悔やまずにはいられない。映画の中に

「丹波市民6万人だけでは映画館は成り立たない。ターゲットは東京都民1200万人だ! キーワードは“シネマ旅”、東京から往復3万円使っても来てもらえる映画館を目指すんや!」

 てなセリフがあったからである。やはりこの映画、ヱビスシネマ。で見なければならなかった。

 

 

「大変だ大変だ~」と棒読みのセリフで騒いでいるのは丹波市役所総合政策課の柴田課長(柴田由美子)と松岡主任(松岡智子)のコンビ。一明係長(一明一人)を引き連れて向かった先はサニー市長(サニー・フランシス)の執務室だ。新聞記事を手に飛び込むと
「大変です! 暴力団が進出してきました! このままだと丹波市が乗っ取られてしまいます!」

 

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