柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『女子大小路の名探偵』 剛力ちゃん地方ドサ回りシリーズ。しかも三十路の岐阜のクラブホステス。剛力ちゃんの未来はどっちだ?

公式サイト

女子大小路の名探偵

監督 松岡達矢
原作・脚本 秦建日子
撮影 ふじもと光明
音楽 倉堀正彦
主題歌 ヒグチアイ
出演 剛力彩芽、醍醐虎汰朗、北原里英、今野浩喜、堀夏喜、小沢一敬、寺坂頼我、柳ゆり菜、ゆきぽよ、遼河はるひ、田中要次、戸田恵子

 

女子大小路とは名古屋栄の歓楽街のこと。長野で撮った信越放送70周年記念映画ペルセポネーの泪に続く剛力(彩芽)ちゃん地方ドサ回りシリーズ、本作は名古屋メーテレ60周年記念作品。なぜ剛力ちゃんは中部地方のテレビ局の周年企画に呼ばれがちなのか? それにしても素っ頓狂ではあっても仮にもギリシャ神話の登場人物だった『ペルセポネー』に対し、本作では三十路の岐阜のクラブホステス。侘しいにもほどがある。一応栄でブイブイ言わせていたが、母親の介護のために実家のある岐阜に帰ってきた、という設定にはなっているが、「掃き溜めに鶴」の場違いな存在にはまったく見えず、見事に田舎のクラブに馴染んでしまっているこの侘しさ。何がいけなかったんですかねえ……

 

 

物語の最後になってようやく剛力ちゃんの駄目弟は探偵事務所を開く。てっきりメーテレでドラマでも作っていて、その前日譚を映画にしたのかと思ったのだが、実際には秦建日子の原作の映画化ということらしい。つまり最初から最後まで「探偵」なんていやしないのだ。じゃあクラブ・ホステスの剛力ちゃんが名推理を披露するのかというとこちらはむしろ暴言と暴力担当。誰も謎なんかといておらず、最後まで残ったのが犯人だという金田一方式ミステリなのである。

名古屋市栄でバー〈タペンス〉でバイト労働している広中大夏(醍醐虎汰朗)は、ある日、喫茶店で知らない女性に水をぶっかけられる。秋穂(北原里英)は、大夏が自分の友人にストーカーをしていると思いこんだのだった。誤解が解けると女好きの大夏はすぐに秋穂と仲良くなり、デートに出かける。その帰り道、二人は公園で倒れている少女を発見する。心肺停止状態だった彼女は、児童相談所の相談員である秋穂が担当していた中学生の娘あすかだった。いやこれ「心肺停止状態」って言ってるんだけど、その状態で病院に運んでもなんともならないよね? この映画の中ではなぜか昏睡状態で、みなが目を覚ますことを期待しているのだった。あすかと同じ場所に死体で捨てられていた女子中学生がいたことから、すわ連続女子中学生殺人犯かと色めき立つマスコミである。

さて、第一発見者として警察に通報した大夏だが、警察からは犯人ではないかと疑われてしまう。あすかの携帯には「ヤマモト」とだけ記された電話番号が登録されていたが、同じ番号が大夏の携帯にも登録されていたのである。

「“ヤマモト”って誰だ?」
「えーっと……お客、かな?」

 

(残り 1693文字/全文: 2887文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

tags: ふじもと光明 ゆきぽよ ヒグチアイ 今野浩喜 倉堀正彦 剛力彩芽 北原里英 堀夏喜 寺坂頼我 小沢一敬 戸田恵子 松岡達矢 柳ゆり菜 田中要次 秦建日子 遼河はるひ 醍醐虎汰朗

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ