『石岡タロー』 映画になりハリウッドにまで行った、スーパースター忠犬ハチ公に続け。石岡タローの名を全国区にしようという一大プロジェクト
→公式サイトより
『石岡タロー』
監督・脚本 石坂アツシ
撮影 荒井康次
音楽 小松重次
出演 山口良一、渡辺美奈代、菊池均也、寺田藍月、寺田紫月、松木里菜、青木日菜、グレート義太夫
忠犬ハチ公と言えば渋谷駅の前で主人の死後も十年以上待ち続け銅像になり映画になりハリウッドにまで行った忠犬界のスーパースターだが、それに負けず劣らず十年以上主人を待ち続けた犬が北関東にもいた。その名を石岡市の石岡タロー。誰だよ!というかそもそも石岡ってどこだよ!というところだが石岡市というのは茨城県。この地元では広く知られた(しかし石岡の外では誰も知らない)逸話を映画にし、石岡タローの名を全国区にしようという一大プロジェクトが本作『石岡タロー』なのである。なお、石岡駅前にタロー像はすでに立っている。
ときは一九六三年(昭和三八年)。茨城県玉造町(現行方市)のナカシマ電器店の娘恭子は、鉄道ではるばる石岡市にある幼稚園に通っていた。年長組とはいえ幼稚園児が幼稚園に列車通学!さすが昭和は乱暴な時代だぜ(これ、石岡の名門幼稚園に通うためというのだが……)。自宅から鹿島鉄道玉造町駅(現在は廃線)まで恭子を送り迎えするのは愛犬コロの役目だ。発車のベルが鳴ると列車から降りて家に帰り、夕方幼稚園から帰ってくる時間にはまた駅まで迎えに来る。なんせ昭和なので紐につながない自由な飼い方も許されていたのだった。
ある朝、いつになく列車は混んでいた。発車ベルで列車から降りようとしたコロだったが、降りそこなってそのまま終点まで来てしまう。石岡駅でコロを抱えて困っている恭子ちゃん。そこにやってきた駅員から、
「その犬、お嬢ちゃんの犬?」
と訊ねられると、恐怖から「違う……」と首を振ってしまう。じゃあ捕まえなきゃ、と駅員に追いかけられてコロは姿を消してしまう。
この映画、人間の身勝手に翻弄される哀れな犬の話なのだが、中でもいちばん腹立ったのはここである。いや怯えていたとか幼稚園児だったからとかいくらでも言い訳はできるのだろうが、それにしたって拒むことはないだろう。ペトロの否認を思いだす残酷さ。しかもその後恭子は熱を出して三日間寝込んでしまい、コロが石岡で行方不明になったというのを親に言いだしたのはすでに手遅れになってからなのだった。あーあ。
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