『野球ユーチューバー有矢』　YouTubeに夢をいだき、YouTubeに裏切られる悲しい男の話が映画に。それにしても野球YouTuberとはなんなのか

2024年02月28日 18時01分　
カテゴリ：殺しの映画レビュー
タグ : HIPPY • Kいち • さいたまんぞう • 侑真 • 坪井昭久 • 浦本和宏 • 石井誠也 • 野球YouTuber向 • 長島翼 • 陽田翔大

『野球ユーチューバー有矢』

監督・脚本・編集　坪井昭久
プロデュース　野球YouTuber向
撮影　石井誠也
音楽　浦本和宏
主題歌　HIPPY
出演　侑真、Kいち、長島翼、陽田翔大、さいたまんぞう

「野球系のYouTubeの成功に夢を抱き。 YouTubeに救われた男と YouTubeに見放された男の物語…….」YouTube映画、というかYouTuber映画である。いまや小学生の憧れの職業ともされるYouTuber、ついにYouTubeに夢をいだき、YouTubeに裏切られる悲しい男の話が映画として作られるということに。しかもこれ、プロデューサーである野球YouTuber向の自伝的ストーリーであるという。いや実際にこういう人間なのかどうか知らないが、これを映画にしてどんな夢を人に伝えようと思ったのか。実際に野球YouTuberが何をして人気を集めているのか、これを見るかぎり単に人気のある草野球選手ということのようなんだが、そんなことが夢でいいのか？　なお、野球をする場面はドローンを駆使した流麗な撮影で安心して見られる。草野球の撮影なんかもこんな感じでアップデートされているのだろうか。野球場面は選手のプレイも含め総じてレベルが高いのだが、その分俳優が出てくると急に映画が怪しくなってくるという……

映画監督の夢をいだきつつ、企業のＰＲ映像撮影で糊口をしのいでいる大谷（Kいち）は、暇つぶしではじめた草野球チーム、マイナーズの活動に夢中になっていた。もともと高校野球をやりたかったが、事情あって野球をやらぬまま大人になってしまった大谷が、遅ればせながらに夢をかなえたのである。メンバーを見る目があったのか、なかなかの強豪に成長したマイナーズに、大谷は新たな選手を連れてくる。福島の名門校で甲子園出場経験もあるという触れ込みの有矢（侑真）である。有矢は試合にも遅刻してくるルーズな性格だが明るさは人一倍。練習試合でいきなり四番キャッチャーで起用されると大いにチームを盛りあげ、打撃でも大活躍して勝利に大いに貢献する。

有矢の明るいキャラクターを見た大谷、なんの脈絡もなく「YouTuberやるか！」と有矢をスカウトして野球YouTuber活動をはじめる。野球YouTuberって何をするのかと思ったら、「野球YouTuberやってます！」と書いたＴシャツ来て原宿竹下通りに立って高校生にアピールするとかそんなの。野球要素は!?

折しもマイナーズは大会の決勝戦に進んでいた（なんの大会かは不明）。決勝の相手は登録者数ウン十万を誇る人気野球YouTuberクーマン（長島翼）率いるクーマンズ。クーマンに声をかけられ、あからさまに挙動不審な態度を見せる有矢。実は有矢、以前にクーマンズに在籍していたがクビになってマイナーズに入団したという経緯があった。なぜ？　そう、マイナーズの面々は知らなかったが、有矢はノミの心臓で、練習試合では活躍できるものの本番ではからっきし、いわゆる「ブルペンエース」だったのである。この試合も、0対0の投手戦で進んでいたが、有矢のありえないエラー連発（バント処理を焦って暴投を連発してしまう）をきっかけに大敗を喫してしまう。

マイナーズのチームメイトは激怒。実は有矢が吹聴していた経歴も嘘に塗り固められたものだった。高校野球では公立校のエースとして地区大会決勝まで進んだが、そこで緊張から打ち込まれて敗北。以後大勝負になると緊張で実力が出せない状態が続いていたのだった。選手たちは有矢の経歴を知りつつ黙っていた大谷にも不信を抱き、自分たちを取るか有矢を取るかと練習をボイコットしてしまう。それでもなおも有矢を売りこもうとする大谷は、有矢をプロ野球のＭＣ募集の面接に行かせる。一人で面接に行った有矢だが、面接に落ちたことで凹み、そのまま連絡が取れなくなってしまう。一ヶ月間メールに返事もない有矢にとうとう見切りをつけた大谷。

だが、有矢のほうは一人で勝手に動画を作って発表していたのだった。「野球あるあるシリーズ」と題して、少年相手にコントのようなことをするさまを固定カメラで撮っただけのもの。大谷は連絡もなく勝手にこんなクオリティの低い動画作りやがって！　と激怒するが、あにはからんや動画はどんどん人気になっていく。大谷がプロデュースしていたときよりもはるかに多い視聴者を集め、人気野球YouTuberになっていくのだ。