Bをかたーる首都圏版。ミムラユウスケWEBマガジン

ジェッツも富樫も気が緩んだのではなく気合いが入りすぎていた?!歴代最多勝利チームのヘッドコーチがあの敗戦に怒らなかった理由

 

今シーズンのCSは波乱の展開が続くのではないかと思わせるような滑り出しとなったのが、千葉ジェッツと広島ドラゴンフライズとの準々決勝GAME1だった。

広島が弱いということではない。Bリーグ7年の歴史でレギュラーシーズンの最高勝率と最多勝利数の記録を樹立したジェッツが、ホームゲームで不覚をとったからだ。今シーズンは公式戦を66試合やって7敗しかしていなかったチームの敗戦確率はおよそ10%。10回に1回程度しかない敗戦がいきなり見られたからだ。

GAME2を98-69で制したあと、パトリックHCに「GAME1のあとに、選手たちに雷を落としたのか?」と単刀直入にたずねてみた。HCは即答した。

 

広島戦GAME2後のパトリックHC

「選手たちも(負けたのが)何故なのかというのをわかっている。本当に、理解していないわけではない。(試合の)スタートとディフェンスに集中する。それからリバウンドに集中する。プレーオフだから、マイペースでやるわけにはいかないから」

そこまで一気に話し終わったあと、こう続けた。

「あとはチームのなかでも、良いコメントが出ていたから。選手たちの間でもそうだし、コーチたちの間でも昨日の夜にそういうものがあって。だから(叱らなかった)です」

今シーズン就任したパトリックHCから感じられるのは、選手にむけて小言を口にしたくなるようなタイミングでも我慢できる余裕と、原から「HCは過保護でいてくれるとたまに思うくらいなので、このままでいてもらえれば(笑)」と冗談交じり評されるほど、選手の力を信じようとする姿勢である。

通常であれば、「Bリーグ歴代最高チームが何をしているんだ!」と一喝しても不思議ではないタイミングでも、ベテラン指揮官らしく泰然としていたことが、GAME2での29点差に表れていたのかもしれない。

続いて、キャプテンの富樫勇樹にはこうたずねた。「HCが叱らなかったことについてはどう感じるのか」と。キャプテンの答えはこうだった。

「昨日の試合に関しては、何が悪かったとか……例えばインテンシティがなかったとか、そういう問題ではないと思うので。試合後にも『しっかりと切り替えて、もう1回、今までやってきたことをやろう』という話だったので。それが本当に、今日は出来たのかなと思います」

GAME1では広島に第1Q(クォーター)に7本の3Pシュートを許したことが大きく響いたと思われがちだが、富樫の感覚としてはオフェンスで本来の力を出せなかったことが敗因だった。だから、だろう。富樫は繰り返し、似たような反省点を挙げた。

「昨日は、少し気合いが空回りしてしまった部分があった」

「一人ひとりが逆に、気合が入りすぎて、チームというよりは『自分で点数を取ろう』という気持ちも少ななからずあった」

 

実は、このような状況になったのには理由がある。富樫の頭のなかには、昨シーズンのCS準々決勝で、ホームで不覚を取ったことへの反省が強く残っていたからだ。レギュラーシーズンの最終盤に富樫は、昨年のCSをこう振り返っている。

「昨シーズンのCSで2連敗したときに、『レギュラーシーズンとCSとでチームの雰囲気があまり変わらなかった』と個人的には少し思っているので。CSは本当に別物なので、チームとして最高の準備をして、今シーズンのCSに臨めればなと思います」

昨年のCSの反省を踏まえて試合に臨んだら、今度は『自分がチームのために何とかしよう』という責任感が強くなりすぎて、上手くいかない。

AをとればBができなくなり、Bを意識したら今度はAが上手くできなくなる。スポーツに限らずよくあることだが、そんなちょっとしたズレがGAME1の敗戦につながってしまったわけだ。

とはいえ、GAME2でしっかりと結果を残したために、昨年のような2連敗で終戦という最悪の事態は免れた。あとは、今夜行なわれるGAME3でしっかりと力を出し切ること。そこに選手たちがフォーカスできかどうかにかかっている。

 

最後にスミスのコメントを紹介しよう。GAME2でチームトップとなる25得点を記録したスコアラーは自信たっぷりに話していた。

「GAME3に集中して入っていける自信はもちろんあります。それに(3連戦の)疲れということでは、対戦相手も同じくらい疲れていると思いますから。

僕は大学時代、週末に4~5試合やるのが当たり前のようなスケジュールだったので。そのときにプレーしていた感覚もあるので、明日は一つひとつの動きに対しても、価値のあるものになっていければいいかなと思っています」

 

GAME2のスタッツ

この試合のスタッツ速報版の読み方は記事末の(*)をどうぞ。速報版であるため、Bリーグ公式HPに載る最終版と異なる場合がありますのであらかじめご了承ください。

「Bをかたーる首都圏版」当面は「無料」で濃く!熱く!発信していきますが、将来的には「タグマ!」の他のWEBマガジン同様に有料化を目指しています。そうでもしないと、残念ながら僕がバスケ取材から撤退しないといけないところまできているからです。詳しくはこちらをどうぞ。

現在、もろもろの規約によって実現できないWEBマガジンの有料化を色々な方に認めてもらうために奮闘中です。記事が面白ければ「いいね!」やSNSでの投稿をお願いします! 記事の更新を知りたい@yusukeMimuraか@b_mimuraのフォローをどうぞ。

最後まで目を通していただき、誠にありがとうございました!

 

*スタッツの読み方*

縦の軸:「1Q」は1Qだけのスタッツ、「2Q」は2Qだけのスタッツです。

「HT」というのはHT突入時の総スタッツ。「3Qまで」は3Q終了時のスタッツ、「最終」は試合終了時のスタッツです。

横の軸:左から2Pシュートの成功数、試投数、成功率。3Pシュートの成功数、試投数、成功率。FT(フリースロー)成功数、試投数、成功率。

「OR」は「オフェンスリバウンド数」、「R」は「トータルのリバウンド数」。「AS」は「アシスト数」。「TOV」は「ターンオーバー数」。「ST」は「スティール」数。

「TOV得」はターンオーバーからの得点数。「ペイント」は「ペイントエリアからの得点数」。「Sチャンス」は「セカンドチャンスポイント数」。「Fブレイク」は「ファーストブレイクからの得点数」です。

数字に黄色い背景がかかっているもの:通常と比べて多かったり、高かったりするもの。

赤い字で書かれているもの:通常と比べて少なかったり、低かったりするもの。

太字で書かれているもの:上記2種類のうち、著しい値のとき。

 

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ