久保憲司のロック・エンサイクロペディア

アークティック・モンキーズ『トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ』・・・古いオープン・リール・テープレコーダーに曲を録りためていった。これこそロックだ (久保憲司)

 

アークティック・モンキーズの新作『トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ』の評判が悪い。なぜ悪いかというとロックじゃないからだそうだ。

 

 

前作『AM』もそんなにロックなアルバムじゃなかった。ロックというよりヘヴィーなアルバムだった。というか、ドラムのアルバムですよね。ヘヴィーなドラム、ドクター・ドレのドラムのようなヘヴィーさがカッコよかった。

 

 

 アークティック・モンキーズのファンは2枚目『フェバリット・ワースト・ナイトメア』の一曲目「ブレインストーム」のような曲を求めているのだろう。

『AM』がヘヴィーだったから、今作くらいで原点回帰なアルバムを作る方が妥当だという気もするが、こんなに外したアルバムを出してくるところもアークティック・モンキーズだと僕は思う。

クィーンズ・オブ・ストーン・エイジのジョシュ・オムをプロデューサーに迎え、彼の砂漠のスタジオで作られた『ハンブルグ』はサイケデリックなアルバムだった。そして、次のアルバム『サック・アンド・イット・シー』はニール・ヤング『アフター・ゴールド・ラッシュ』ドクター・ジョン『ガンボ』を生んだアメリカの魂(ニール・ヤングはカナダ人ですけど)のようなスタジオ、サウンド・シティ・スタジオで録られた。彼らはニール・ヤングというより、トム・ペティのポップなんだけどビッグなドラム・サウンドに憧れたんだろうな。そのドラム・サウンドを作っていたのがジミー・アイヴォン。『AM』のドラム・サウンドはドクター・ドレと書いたが、ジミー・アイオヴィンはドクター・ドレとあのヘッドフォン会社、Beatsを作った。ヒップホップとロックが融合って笑うようなことをアークティック・モンキーズはやっていたのだ。いい音というのはジャンルを超えるわけだ。

 

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tags: Arctic Monkeys Kasabian Kendrick Lamar Queens of the Stone Age

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