松沢呉一のビバノン・ライフ

「戦争したくなくてふるえる」に震える-デモは雲のようなもの(松沢呉一) -2,923文字-

 

雲のように集まって、雲のように消える

 

vivanon_sentenceHIVの啓発活動、反原発運動、カウンター行動などなどに参加してきたアーティストの張由紀夫君がこんなことをFacebookに書いてました

街中の抗議行動やデモもそうだし、ネット上でも周りを気にしてこれまで決して「それ」を語らなかった人々が言葉を発するようになっている。

デモを歩く時、その一人一人のポジションは何の意味もない。もちろん一人一人が違う顔をもち、違う人生を歩む者たちであることは大事なことだが、それはデモの大きさや主張とは関係ない。

松沢呉一さんが昔、渋谷で行われてたTwitter発の反原発デモを「まるで雲みたいにいつのまにか集まってデカくなるんだけど、解散地点に着いたらまた元の小さな雲に戻って霧散する」と評していたのがすごく印象に残っている。

俯瞰すれば小さくなって顔や服装の峻別が付かなくなるように、同じような小さな「ただの」雲が寄り集まって巨大な雲になる。街を練り歩く。その絵が為政者たちを怯えさせプッシュする。そして終わればそれぞれの暮らしに戻って行く。

そんな日本中の街中で行われているデモや抗議に、これまで来なかったブロックの人々が路地から沿道から次々に加わってる。

右側からも左側からもゴチャゴチャと脚を引っ張ろうと物を投げてくる人もいるけれど、よく見れば紙屑や小さな砂利でしかない。うっちゃって加わろう、街の群衆に。

 

なんでもかんでもすぐ忘れ、「記憶力がない」「忘れさせたら右に出るものがいない」と評される私ですが、ここに出ている言葉はよく覚えてます。

 

 

「ちょっと参加」を可能にしたTNN

 

vivanon_sentenceこの表現はそれ以外の時間、どこにいるのか、何をしているのか互いにわからないことを踏まえています。組織に属しているのではなく、思想さえも共有されておらず、それを問われることもない。

そういう人たちがサクッと集まってサクッと散る。おっちゃんとしては「デモのあとは朝まで語り合おうぜ」と思ったりもするのだけれど、TwitNoNukesのありように寂しさを感じつつも未来を見たのであります。

皆さん、そのあとデートがあったりするIMG_2609のだし、翌日はまた仕事なのだから、「今しかない」「突入せよ」「逮捕を恐れるな」ではないやり方が求められていました。

世の中の大多数は逮捕なんて覚悟できんですよ。私だって覚悟できない。失うものなどないと思っている私でも「準備に3日はくれ」って感じ。覚悟できる人は何人かいるとしても、私の周りで逮捕を娯楽にできるのは写真家の久保憲司くらいかと思います。ホントに楽しかったらしいですからね。メシもうまかったと言っていたし。

巨大な雲を作るには、すぐに日常に戻れることが必須。買い物の途中でちょっと参加。営業の途中でちょっと参加。クラブに行く前にちょっと参加。ラブホに行く前にカップルでちょっと参加。渋谷だったら、買い物もクラブもラブホも大変便利です。

現実にTwitNoNukesはそういう層を拾い上げ、そういう層こそが主催をしていたわけです。ラブホはともかく。

 

 

「戦争したくなくてふるえる」の衝撃

 

vivanon_sentence6月26日、札幌で行われるデモ「戦争したくなくてふるえる」はその方向を極めました。

 

 

19歳フリーター、デモ初企画 戦争怖くてふるえる 26日札幌

19歳、フリーター。音楽とおしゃれが好きで、政治には関心がなかった。そんな女の子が発起人となって26日、安全保障関連法案に反対するデモが札幌で行われる。呼びかけたのは札幌市中央区の高塚愛鳥(まお)さん。「戦争は怖い。イヤだ。許せない。むかつく…。若い世代が自分たちの言葉で反対の声を上げたい」と力を込める。

デモの名は「戦争したくなくてふるえる」。若者に人気の歌手西野カナさんの曲の「会いたくて震える」という歌詞にかけた。<戦争が始まったら自由が奪われる。バカな政治家たちに自由で楽しいあたし達の暮らしを奪われてたまるか!>。インターネット上のデモの告知には、自身の写真とともにそんなメッセージを載せた。(略)

「北海道新聞」

 

 

TNNの時は「オシャレしてデモに行こう」との呼びかけがなされ、これがまたヘサい人たちから批判されたわけですが、ここでは自身が「おしゃれが好き」と宣言しております。

 

 

 今月中旬、若者が「円山公園」でデモをすると知った。(札幌の)円山なら行こうかなと思ったら、京都の円山だった。その話を安積さんにすると、だったら自分でしたらいいと言われた。「誰かがやんなきゃ誰もしない、何も変わらない」。その日のうちに安保法案についてネットで調べ、若い友人たちにデモの企画をネットでぶち上げた。

「北海道新聞」

 

素晴らしい軽快さ。震えます。

 

 

Stupidな政治家たちに暮らしを奪われたくない

 

vivanon_sentenceサイトを見て、さらに震えました。

 

スクリーンショット(2015-06-25 4.59.30)

 

 

2011年以降のデモの数々を秋山理央の動画で仔細に分析、「必要なのはこの方向だ」と計算した広告代理店の仕業かと、ネトウヨ、ヘサヨレベルの発想をしてしまいました。

旧来の左翼からすると、「サイトに辺野古のことが一言も書かれていない」「侵略の歴史を不問にしている」「問題だらけの現在の日本を肯定している」「戦争さえなければそれでいいのか」ということになりましょうね。

それを言っても彼女は動じないでしょう。それよりも、同世代の同じ価値観を持つ人に髪型や化粧法をdisられる方がショックかと思います。

 

 

 

サムネイルの指定に失敗したんじゃないかな。それもまたよし。

 

 

紙屑や小さな砂利の仕組み

 

vivanon_sentence 「戦争したくなくてふるえる」に対してはどうかわからないですが、SEALDsに対しては「あれではダメだ。ロビイングをやれ」「あれでは足りない。もっと勉強しろ」とハードルを上げることに一所懸命になっているStupidでTriflingな人々が今回もワラワラ湧いてます。

 

 

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