松沢呉一のビバノン・ライフ

なぜSEALDsは強いのか-老害シリーズ・社会運動編 1-(松沢呉一) -2,193文字-

 

先週金曜日のこと

 

vivanon_sentence先週金曜日は私の誕生日にして、安保法案可決の日でありました。正確には日付が変わって9月19日だったわけですが、誕生日のことはどうでもいい。毎年どうでもいい。

私はたいてい国会前に行っても、やることやってとっとと離れて銭湯に行くことが多いのですが、あの日は午後6時頃から深夜まで国会前にいて、そのあと場所を移して、朝までSEALDsのメンバーを含めた仲間たちと語り合ってました。

その数時間で、私はSEALDsやT-ns SOWLのメンバーに、猛烈な興味を抱きました。今までも十分興味を抱いていましたけど、DSCN3383あの日の彼らの様子を見て「なんだろうな」と思わずにはいられなかったのです。

ステージでは渾身のコールが続いている深夜、疲れきって端っこでうつらうつらしているSEALDsのメンバーもいました。

この写真の彼もそうですけど、家が遠い学生たちは、遅くなると、ネットカフェや友人宅などに泊まらなければならなくなる。学校やバイトもあるので、朝一で家に帰る。何日もの間、そんな生活をしていたのですから、そりゃ疲れますよ。

ここまで張りつめてきたものがポキンと折れてしまうのはないかと心配になって、メシに誘ったのですけど、心配は無用でした。もちろん、「疲れたので、この連休は休みたい」くらいのことは言ってましたが、すでに先のことを考えています。

あの明るさ、したたかさ、強さはなんだろうなと。

 

 

学生たちの明るさはどこに起因するのか

 

vivanon_sentence下の写真はSEALDsのトラメガを借りているT-ns SOWLの高校生です。彼らは高校生ですから、強行採決の時間を待たずに帰りましたが、彼らもやはり前しか見ていない。

DSCN3346

この写真を撮る時もちょっとした誤解があって、一同爆笑。少なくとも表面的には悲壮感なし、沈鬱な雰囲気はまったくなし。

これは世代なんでしょうかね。奥田愛基君は自分らは最初から絶望から始まっている世代であり、あとは希望しかないのだとどっかで語っていました。そういった世代共通の背景に個人の環境や経験が加わっているのでしょうけど、あの明るさは彼らの冷静さと聡明さに基づくものだろうと思います。

私はお祭り体質なので、目標に向かって全力を尽くし、その目標が達成できたらできたで満足して次のことに着手。達成できなかったら敗北感に打ちひしがれて投げ出して、次のことに着手することが多いのですが、彼らはこれは投げ出すことができない闘いだと知っています。敗北を抱きしめている暇などない。

だから、ここに至るまでに「次はどうするか」をずっと考えてきたのであって、それをすぐさま着手し始めています。

 

 

なぜ焼け跡の街娼たちは生き生きとしていたのか

 

vivanon_sentenceジョン・ダワーの『敗北を抱きしめて』(岩波書店)で活写されている戦後の日本人たちは、打ちひしがれながらも明るい。それは戦争に負けつつ、戦争から解放されたことによります。

 

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