小池ゆり子を勝利に導いた一因は「女」-なお力をもつ属性のイメージ-(松沢呉一) -3,839文字-
小池ゆり子圧勝
事前の読み通り、小池ゆり子が二位以下に大差をつけて東京都知事に。
各紙報道は似たり寄ったり。
朝日。
読売。
以下、全部同じなので省略しますが、どの報道でも「初の女性都知事」という点を強調しています。
「女性」という幻想
現に初なのだから、そこを取り上げるのは間違ってないのですけど、本来その人物が男であろうと女であろうとどうでもいいこと。
しかし、女である小池ゆり子の持つ物語には勝てませんでした。自民党に反旗を翻し、自殺者を出すほどの東京都議会の闇に挑み、都政を改革する。しかも、それが女。「か弱い女(プッ)が闘っているぞ」と。ここでは「女だから自民党で冷や飯を食わされた」という物語もついてきます。
「都議会に巣食う魔物に挑む」という構図は男であっても票を充分に集めたでしょうけど、小池ゆり子は日本会議の影響が大きいこと、言うまでもなく改憲派であること、核武装を主張すること、在特会と懇意であること、政治資金に関する疑惑があること、自身の発言に責任をとらないことなどが、女という属性で相殺された点がありそうです。
「女だから、ひどいことにはならないだろう」という安心感を抱いてしまう人たちがけっこうな数いたのでしょうし、「ともあれ、初の女性都知事は歓迎すべき」と考えた人たちもいたのでしょう。
ここで思い出すのは前回の戦争です。「女が社会進出をする絶好の機会」として婦人運動家たちは戦争を支持し、礼賛をしていきました。歴史は繰り返す。であるなら、歴史から学ぶべきですが、「歴史が嫌い」「歴史が苦手」という人たちが多いからなあ。
女という属性をフルに活用するのではなく、女という属性が持つイメージをフルに活用して、小池ゆり子は都知事としてゴリゴリ活躍するのでしょう。
悪い女が想定されない不思議
ちょうど今「ビバノンライフ」でやっている「白縫事件」で見ているのは、「虐げられた女という物語の中では、冷静に判断ができなくなる人たちがいる」ってことです。
今の時代にもそういう人たちがいっぱいいて、「週刊文春」「週刊新潮」の鳥越叩きは万単位で票を減らした可能性がありそう。とくに女性票。
一切本人は弁明をせず、告訴した姿勢もまたマイナスに働いた可能性がありますが、それを含めて、週刊誌のシモネタ記事は有効ってことです。
そこに乗ってダメ押しをしたのがこの人。
びっくりしました。
もともと私は「宇都宮けんじでは勝てない」と言ってきて、前回の都知事選でも、選対に関わっていた知人からの協力依頼も断っていますので、いままでさんざん支持してきたのに、この一件で手のひらを返したわけではなくて、「やっぱりこの人はダメだな」とこれで確信。このダメ押しで宇都宮けんじのダメさをダメ押しされました。選挙は最悪を避けて、よりマシな人を選ぶものですから、今後投票することがあり得ないとは言わないですけど。
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