電話をしながらトイレットペーパー剥がし—浮気における女の大胆さ、男の小心さ 下-[ビバノン循環湯 278] (松沢呉一) -2,760文字-
「相談ついでのラブホ—浮気における女の大胆さ、男の小心さ 上」の続きです。
股間にかけたタオルの意味
今日のところはここまでとして、さっさとシャワーを浴び、二人でベッドに横になった。ここで枕元に置いてあった彼女の携帯電話が鳴った。
「あっ、彼氏だ」と彼女は携帯の表示を見て喜んでいる。
どっちの彼氏か知らないが、そんなもん、出るなよ。彼女は横で寝ている私の股間にバスタオルをかけて電話に出た。
「わあー、嬉しい。明日? いいよ。楽しみにしてるね」
私と話すのとは別の弾んだ声を出している。本当に楽しみにしていると同時に、そう振る舞っているように思えなくもない。彼女と知り合った当初は私に対してもそういうところがなかったわけではないが、今となってはそういう装いを私に見せることはまずない。
彼は、二股をかけられていることも、それとは別の男と今も一緒にホテルに来ていることなど想像もしていないだろう。
デートの約束をして彼女は電話を切り、すぐに私の体に寄り添った。
「あのさ、電話に出る時、チンコにタオルをかぶせることにどんな意味があるんだ?」
「そんなものを前にして電話に出たら、彼氏に悪いじゃん」
言っていることがムチャクチャだが、わからんではない。電話で「ありがとうございます」と言いながら頭を下げるオバハンとちょっと似てるかな。
それさえしておけば、浮気をしていることの罪悪感が消える魔法のバスタオルなのである。
知人の自殺とトイレットペーパーの交錯
彼女はこのあとトイレに行った。私はその間に自分の携帯電話をチェックした。編集者から「至急電話をくれ」と伝言が入っている。電話をしたが、相手の携帯がつながらない。
彼女はトイレから出てきて、私の横に戻ってきた。と、そこに電話が入った。今度は別の編集者からだ。いつもなら、こういうときは電話に出ないのだが、たまたま携帯電話を手にしていたために出てしまった。
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