子どもができにくい複合的な理由—エロい人助け(2)[ビバノン循環湯 498] (松沢呉一)
「主婦の生活に退屈した時に思い出すのは風俗嬢時代のこと—エロい人助け(1)」の続きです。
子どもができない理由
彼女はこんなことを聞いてきた。
「主人は、結婚してから四年、いつも中出ししているのに、子どもができないんですよ。ピュッと勢いよく出る人と、ドロっとしか出ない人がいるじゃないですか」
長らく私は精液というのはピュッと出るものばかりだと思っていて、漫画でもよくそう描かれているが、知人でドロッとしか出ないと言っているのがいて、これは個人差らしい。
「主人はドロってタイプなんです。ドロッと出る人って妊娠しにくいと思うんですよね」
「そういう人たちでも子どもはいるから、妊娠しないってことはないけど、妊娠しにくい一因にはなっているかもね。精子の数が少ないとか泳ぐ力が弱いとか、他の要因と重なった時には子どもができにくくなりそう。白人の方が精液の飛びがいいし、量も多いと思うんだよ。あっちのビデオを見ていると、すごい量がすごい飛ぶ。知り合いでオーストラリア人とつきあっているのがいて、膣外射精すると、顔を越えて後ろの壁に飛んで、ベチャって音がするんだって」
「聞いているだけで妊娠しそう」
「オレも腹に出そうとして、相手の顔にかけてしまったり、今日みたいに騎乗位素股をしていて、自分の顔まで届くことがあるんだけど、壁は無理だな。その話を聞いてオーストラリアとは戦争しちゃダメだと思ったよ。だからと言って、そういう人とセックスしてすぐに妊娠するってことはないから、飛べば飛ぶほど妊娠しやすいということはないと思うけど、子宮に届くかどうかだから、ドロッと出るより、ピュッと出る方が有利とは言えるわな」
「あのね、もうひとつの要因が私の方にあるかもしれなくて、もしかすると、私がイケないためではないかって人に言われたんですよ。そういうことってあるんですか?」
※Burlesque beauties of the 1890s
オーガズムと妊娠
ちょうどこの時、弁護士が書いた本を読んでいて、そこに、昭和三一年二月九日、福岡高等裁判所で判決があった民事裁判の判例が出ていた。
ある夫婦の話で、この夫婦は結婚三年目なのだが、まだ子どもはおらず、夫の両親と四人で同居。
ところが、舅は「子どもができないのは自分の息子が下手だからだ。オレだったら必ず作ってみせる」などと言っては嫁に関係を迫る。嫁は警戒して近寄らないようにしていたのだが、舅は乱暴もので、晩酌の時に嫁がお酌をしないと、ものを投げたり、暴力をふるったりする。やむなく酌をすると、体を触ってきたり、抱きついてくる。
嫁は夫に苦情を言い、「お父さんに、そういうことをしないように強く言って欲しい。それができなければ、お母さんから頼んで欲しい。さもなければ両親と別居したい」と頼んだのだが、夫は気が弱く、何も対策を講じてくれなかった。
そのため、夫への愛情が冷め、舅の暴力もやまないため、嫁は実家に帰り、離婚と慰謝料請求のために裁判所に訴え、裁判所はこれを認め、夫、舅ともに慰謝料を支払うように認めた。
詳しく書かれていないのだが、高等裁判所までもつれたのは、夫側が妻側の欠点をあげつらって控訴したためのようである。
ひどい父子もあったもんだが、この裁判自体はどうでもよくて、ここで私が注目したのは、「下手だから子どもができない」という指摘である。これ自体、まったく根拠のないことではないと思う。
「生まれてから一度たりともオーガズムを感じたことがない」とか「結婚前につきあっていた他の男とはイケたのに夫とは一度もイッたことがない」といった妻であっても、現に子どもを産んでいるから、「下手だから子どもができない」とまでは言えないのだが、「下手だから子どもができにくい」ということはあると私は思っている。
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