松沢呉一のビバノン・ライフ

立て看を出した学生に対する東洋大職員の恫喝は懲戒対象—懲戒の基準[1]-(松沢呉一)

以前から、Facebookで軽く触れてましたが、官庁、学校、企業における処分の基準ついてずっと考えてました。国という単位では法律があり、地方公共団体という単位では条例があります。もっと小さな単位の集団でもそれぞれにルールがあって、それに反すると処分されます。これ自体はいいとして、「どう考えたらいいのだろう」という点があって、頭を悩ましてました。

それについては先々見ていくとして、このシリーズを書き進めながら、私の頭では整理しきれないパートがあるために出すのが遅れてしまいました。いまなお整理できておらず、このシリーズは最後まで行きつけないと思います。あくまで「私の考えている最後」であって、そこに行きつけなくても意味ある内容ですので、ここで提示されたことを各自利用するなり、発展させるなりしていただければと思います。

数ヶ月間、放置していたため、以降取り上げている内容は古くなっているものがあるのですけど、東洋大学の立て看による退学処分騒ぎがあったので、ここから始めます。

なお、このシリーズでは「規程」と「規定」という言葉が頻発します。両者の違いについては以下。

 

 

 

 

1の意味はだいたい同じで、違うのはそれぞれの2の意味。「規程」は内部的なもので、しばしば体系的な決まり全体のこと、「規定」は一般的なもので、しばしば個別の決まりを指します。よって、このシリーズで出て来る官庁、学校、企業などの懲戒は、多くの場合、「服務規程」「就業規程」「処分規程」といったもので定められているのですが、同じような内容でも、「服務規定」「就業規定」「処分規定」になっている場合もあります。統一が難しい言葉なのです。また、「規程」になっていても、その中の個別の決まりを指す場合は「規定」になりますし、それらを総称するような場合も、総称することで一般化してしまい、「規定」の方が適切と感じることがあります。厳密に使い分けることは難しいので、アバウトに行きます。

 

 

たかがビラ配り、たかが立て看で退学をちらつかせた大学職員

 

vivanon_sentence私が大学生だった頃は、大学の敷地内で立て看を出すのも、ビラを配るのも、ポスターを貼り出すのもすべて無許可でできました。

ちょうどその頃、都心の大学が多摩地区に移転する動きが活発になり、それを契機にそれらの行為が禁止される大学が出てきます。中央大学がそうだったはずです。

「なんてこったい、女子大かよ」なんて言っていたものですが(当時から女子大は禁止が多かった)、それから40年ほど経って、今や一切禁止か、申請を出す必要がある大学の方が圧倒的に多いでしょう。早稲田大学には今も立て看が出ていますが、たしか申請制になったはずです。ゲリラでやっているのはいますけど。

そして、東洋大学ではたかが立て看、たかがビラ配りで退学をちらつかせるように。

 

 

 

2019年1月24付「日刊スポーツ」

 

 

この学生が立て看とビラで主張した内容についてはここでは飛ばします。また、大学が立て看、ビラ、ポスターなどを禁止することの是非についても飛ばします。腹立たしさはあるのですが、そういうルールが現にあるということを前提にして話を進めます。

以下が学校側のコメント。

 

 

本人が名前を自身で公開しているにもかかわらず、個人情報云々と書いているのは、「学生に配慮する当大学」ってポーズだろうと思われます。これについては学生本人も指摘している通り。薄っぺらで悪質なパターナリズム。

以下は「東洋大学学生生活ハンドブック2018」の規定。

 

 

学生本人のコメントを見れば、職員が退学になる旨をちらつかせたことは間違いはなさそうで、両者の言い分を聞き取りした上で、そのようなことがあったのなら、この職員に対して学校側は処分すべきでありましょう。

学生にルールを守れと言うなら、まずは自分たちが守れ。学則と就業規則をチェックして職員を適切に処分せよ。

では、そのルールを確認していきます。

 

 

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