松沢呉一のビバノン・ライフ

Googleに必要なのは社内恋愛禁止規定—懲戒の基準[38]-(松沢呉一)

米国で社内恋愛禁止規定が一般化してきた背景—懲戒の基準[37]」の続きです。

※ここに書いた提案の一部は米国では憲法違反でした。詳しくは「「積極的合意」の会社版・職場の恋愛契約(lomance contract)—懲戒の基準[44]」を参照のこと。

 

 

 

Google幹部の不適切な性交渉

 

vivanon_sentence今現在話題になっているのはGoogleです。

 

2020年1月14日付「forbes

 

 

Googleの持ち株会社であるアルファベットの法務責任者デビッド・ドラモンド(David Drummond)が、社員とつきあって妊娠させておきながら、別の社員と結婚。捨てられた方の社員は退社し、昨年8月にこのことをブログで告発。Googleが調査を進めていたところ、今年になってドラモンドは1月いっぱいで辞任することを発表という内容。

ということなので、マクドナルドのCEO同様、これはセクハラではありません。「フォーブス」の記事もカッコつきながら「セクハラ辞任」となっているように、日本ではこれをセクハラと報じているメディアがありますが、米メディアではセクハラとはしていません。sexual misconductです。フォーブスの元記事もそうなってます。

セクシュアル・ミスコンダクトは性的非行性的不正ですが、日本語に馴染む表現をすると「不適切な性交渉」といったところでしょうか。これをセクハラとするのは不適切な翻訳であり、はっきり誤訳と言っていい。いかにこの国では「セクハラとは何か」が理解されていない証左です。これについては「都議会の性差別野次(セクハラ野次に非ず)を振り返る—下戸による酒飲み擁護 12」を参照のこと。

「強制わいせつ」も「性差別」も「不適切な性交渉」もなんでもかんでも同じに見えるアバウトさをまず解消しなきゃ。それができないからセクハラはなくならず、セクハラの拡大解釈もなくならない。であるなら、社内恋愛禁止・社内セックス禁止で対処するしかない。

 

 

Googleもこれで解決

 

vivanon_sentenceセクハラと訳してしまうと、あたかもGoogleにはセクハラを禁止する規定がなかったようであり、そのために懲戒ができないのだと誤解してしまいます。

Googleではセクハラ問題が頻発していて、セクハラで退職しても退職金を払っていたことが問題になるなど、ここ数年セクハラで揺れていたのは報じられてきた通り。当然、対策はとっていて、2018年10月26日付「朝日新聞デジタル」によると、「幹部には、同僚との交際を公開することを義務づけている」とあります。社内恋愛禁止にしない企業では、この方法をとることが多いようです。

しかし、この方法は実効性が薄い。恋愛禁止も実効性がどこまであるのかわからないですが、こちらははっきり実効性が薄いことが想像できます。一回こっきりのつもりでやったセックスは交際ではない。これをも交際に入れるとしても、いちいち公開するか? 自分や相手が既婚だった場合はいよいよ公開するはずがない。

しかも、Googleでは懲戒対象ではない指針だったのではなろうか。その場合、二股かけようと、中出ししようと、妊娠しようと、捨てようと懲戒処分にできない。

ひとたびつきあった関係でもセクハラが成立することはあるでしょうけど、相当に制限されてくるだろうと思います。なにしろ今回の騒動を起こしたデビッド・ドラモンドは法務担当ですから、そこは抵触しないように計算してましょう。

これを懲戒対象にしても、社外の相手と社内の相手との二股は避けられない。社外で二股をかけている分には知ったことではないわけですから、社内恋愛禁止、社内セックス禁止しかないのではなかろうか。両罰の規定にすれば、幹部が迫ったところで応じるのは減って、それでもやったら会社としては、両方を解雇にして、「両者間のトラブルは社外で好きにやってくれ」ってことにできます。

相当に社内での恋愛、セックスの多い会社のようですから、そうなったら、別れたり、隠したりで大変そうですね。

 

 

すでに日本でも存在する恋愛禁止規定

 

vivanon_sentence日本では現状、恋愛禁止規定は裁判になったら無効とされる可能性が高いですが、恋愛禁止規定導入はそう難しくないだろうと思えます。

というのも、すでに恋愛禁止規定が存在する職場は少なくないようです。

 

 

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