松沢呉一のビバノン・ライフ

コロナウイルスを利用する人たちと巻き込まれていく人たち—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[6]-(松沢呉一)

伝染病予防法から感染症法へ—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[5]」の続きです。

 

 

今、新型肺炎が熱い!!

 

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キャバクラやヘルスは危険なのか?—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[1]」に書いたように、もともと「新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情」シリーズは、性感染症関連のアクセスが増えたことから、「だったらちょっとは書いておくか」と思い立ったものです。

そしたら、驚きのアクセスがありました。更新から1週間で見た時に、通常の100倍くらいのPVです。100倍は比喩ではなくて、Googleアナリティクスで数字を今確認したら、たとえばナチス・シリーズのように控えめなPVの記事に比較すると、100倍以上です。ナチス・シリーズがいかに読まれないかって話でもあるのですけど、今年になってからもっともアクセスの多かった「槇原敬之が書いた歌詞はシャブ臭い—「世界に一つだけの花」を吟味する」と比較しても10倍以上の開きです。

性感染症関連のアクセスが増えていることが新型肺炎の影響かどうか自分でも半信半疑だったのですが、ホントでした。そのくらい新型肺炎の話題を検索して求めている人たちが多い。まして、もっとストレートに新型肺炎の話題を取り上げているメディアにはアクセスが殺到しているはずです。

多くのニュース・サイトやブログでは、受けがいいと、二度三度目を狙って同じ傾向の記事を出します。「受ける方・受ける方」に傾く。ニーズに応えているってわけです。それがまた不安や恐怖を煽ってニーズを作り出す。

私も少しは数字を考慮してますけど、新型肺炎については続けることはできない。連日情報をチェックしていても判断ができませんし、事態が刻一刻と進むので、時間をかけたい私には発言するまでに至れない。

このまましばらくは明治時代の話を続けるかと思っていたのですが、さすがにまずい感じなので、さんざん言われている「冷静になれ」とのメッセージを私も言わざるを得なくなってきました。

3月3日22時現在の「朝日新聞デジタル」アクセスランキング

 

 

情報がウイルスに侵犯される

 

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上の「朝日新聞デジタル」アクセスランキング。を見てください。おそらくどこのニュースサイトもプログもこんな感じでしょう。「ビバノン」のページの右肩にあるアクセスランキングもそんな感じ。ベルツ花子の話なんてまるで読まれない。大陰嚢の話もまるで読まれない。金玉は面白いけどなあ。

私が「朝日新聞デジタル」のランキングで注目したのは9位の「大分でも新型コロナ感染者 ラウンジ勤務の30代女性」です。店で感染したかどうかはわからないですが、出張客や観光客も来店しますから、そりゃそういうこともありましょうよ。

だからといって、他の飲み屋までが閉める必要はない。どっかの飲食店で食中毒が出たからといって、類似の飲食を出す店が営業停止する必要はないのと同じ。どっかの家で家庭内感染したからと言って、家庭禁止にならないのと同じ。あとは個々人が判断すればいい。

新型肺炎と関係がない8位の「南米のカーニバルに原爆山車 おしりだけじゃない本質」もついでに読むべし。

参考までに以下は本年に入ってから一昨日までの「コロナウイルス」のグラフ(Googleトレンドより)。ウェブ全体の数字が元です。

 

 

 

1月下旬の山はダイヤモンド・プリンセス号の乗客からに感染者が出たことを受けたものです。

今は問題が拡大して、自宅勤務、学校の休校、世界的な感染者の増大など多岐に及ぶために数字が増えていて、「まだまだ行きまっせ」ってところです。これが当面続くのだろうと思います。

結果、他の重要な情報が流れなくなります。思考することもできなくなります。

 

 

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