松沢呉一のビバノン・ライフ

今まで通りの生活をするように見えるスウェーデンの人たち—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[21]-(松沢呉一)

ロシアへの疑問—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[20]」の続きです。

 

 

 

スウェーデン方式をどう見るかは相当に難しい

 

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イタリアがグイグイ数字を伸ばしている頃、北欧も数字を伸ばしていたので、そのまま行くのかと思ったらそうでもなくて、そうでもなかったためにチェックをしてなかったのですが、しばらくしてスウェーデンは独自路線を歩んでいることに気づいて、以来、注目をしてきました。しかし、簡単には触れられない。どう評価するのか難しいのです。

「ある国を基準にして考えると、他の国はおかしな数字ばかりに見え、陰謀論にすがりつきたくなるけれど、よくよく調べると、あるいは時間を置いてみると、納得できる」「国によって事情は違い、気候、経済、政治、医療、住環境、文化といったことにも左右されるため、一律の基準では判断できない」ということを何回かにわたって見てきたわけですが、最大の難関はスウェーデンです。

スウェーデンは独自路線であるために、他の国で起きていることが起きなかったり、他の国で起きていないことが起きていますから、よその基準を持ち込んで判断することが難しい。しかし、それだけに、よその国で当たり前のように考えられていることが実は間違っている可能性、意味がない可能性を炙り出す存在です。

ただ、その実情を知るにも若干の困難があります。スウェーデン語の自動翻訳は精度が低く、理解できないことがあるのです。一方でスウェーデン国外の報道にはバイアスが入ってしまって、内容の精度が低いことがあるというジレンマがあります。

しかし、日本語でもいい記事が出ています。たとえば以下。

 

 

2020年4月14日付「フォーブス日本版」より

 

以下を理解していただくために、まずはこれを読んでおいてくださいな。

 

 

何もしてないようにも見えるスウェーデン

 

vivanon_sentence筆者の吉澤智哉氏はスウェーデンに移住して、4年間住んでいる人物です。それだけに見方は的確で、日本ではとうていこの方式を導入できないことも理解できます(なぜ不可能なのかは次回以降詳しく見ていきますが、端的に言えば国民の質が違うからです)。

ここに書かれていることに補足しながら説明をすると、スウェーデンはロックダウンをせず、国民の自主的判断に任せるという考え方を貫いています。

50人以上の集まりは禁止ですが、それ以下であればコンサートも可能なのだと思います。これ以外に老人施設への訪問の禁止など、いくつかの禁止事項がありますし、さまざまな国民への要請はしていて、行動指針も出していますが、それに従うかどうかは国民一人一人の判断です。

営業時間の短縮はありつつ、店の多くは今まで通りに営業し、市民はそこで食事をし、酒を飲んでおり、人出が減っていても、街は今まで通り。小学校も休校せず、授業を続けています。これは子どもを介して感染が拡大したエビデンスがないとともに、休校することで、医療関係者の親が仕事を休んだり、切り上げたりすることを避けるためです。

その点、中等学校以上は親が世話をする必然性がないため、遠隔授業を推奨していますが、通常の登校もなされています。

会社も同様で、在宅勤務が推奨されていますが、いつも通りに出勤することも可能です。

もし感染したと思ったら、重症者は病院に行くとして、軽ければ家で自主隔離です。病院に通知する必要もない。検査も不要。

 

 

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