国民の3パーセント以上がすでに感染していると思われるスウェーデン—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[22]-(松沢呉一)
「今まで通りの生活をするように見えるスウェーデンの人たち—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[21]」の続きです。
※無料部分だけ読む人が誤解するといけないので注を入れておきますが、「国民の3パーセント以上が感染」というのは、「見えない感染者」までを割り出したものであり、どの国でも「見えない感染者」がいて、3パーセントは決して抜きん出た数字ではありません。
一昨日の数字を使用していますが、差し替えて計算し直すのが面倒なので、そのままにしておきます。
個人の決定を尊重する分、感染は自己責任
政府に対して「検査しろ」と要求している人の中には、国家が国民を完全に把握して、完全に管理できると考える人たちがいそうですけど、そんなことはできっこない。中国みたいな国家ならともかく。
「全体がわからないと対応ができない。だから検査を増やせ」みたいなことを言う人たちもいますが、電卓叩け。自分で電卓を叩いていないから、そういうことを言い出すのです。
死亡者数、致死率、陽性率からアバウトながら全体を概算できます。数学の劣等生だった私でもある程度の試算は可能であり、まして専門家だったら、もっと正確に数字を出せます(劣等生の概算と専門家の概算の例は以下に出てきます)。専門家は自分と同程度の頭脳しかないと思い込むのはやめれ。
ロックダウンを典型として政府が国民を等しく管理するのではなく、個人の決定を尊重するのがスウェーデンです。感染したくない人はその人なりの生活を、感染してもやりたいことをしたい人はその人なりの生活ができるようにする。
政府は何もしていないのではなく、既存の制度を使い、足りない部分は法改正をして、それらの選択ができるようにしています。
個人の選択が尊重される分、感染は個人の責任であり、重症化しない限り、個人で解決をする。
その結果、多数の人が感染しています。これはスウェーデン方式の必然です。
※昨日の山手線内。午後4時台だったかと思います。通常であれば早朝の山手線くらいの乗客数。
感染者が増え続けるスウェーデン
ゆるゆるに見えますが、人によってはスウェーデン方式は過酷です。
そのことを数字で確認してみましょう。
以下はスウェーデン公衆衛生局による4月18日現在の感染者数と死亡者数です。
13,822名も1,511名も、ヨーロッパの中ではとくに大きな数字ではなく、感染者数で言うと、現在ヨーロッパ諸国の中で13番目で、ドイツの10分の1以下です(ドイツの感染者数についてはすでに説明した通り)。人口比で言えばスウェーデンはもっと上になりますけどね。
北欧においては現在でもダントツでトップです。
スウェーデン 13,822/1,511
デンマーク 7,268/321
ノルウェー 6,937/136
フィンランド 3,369/75
以下は人口が少ないので省略。
人口はスウェーデンのみ1千万人を超えていて(1,023万人)、他はざっと半分程度なので、人口あたりの感染者の数はどっこいだとして、スウェーデンの特徴は死亡者が多いことです。致死率は11パーセントに近くて、イタリア、スペイン、フランス、英国と並ぶ率です。
通常、致死率が高いのは、院内感染が起きて基礎疾患のある高齢者への感染が拡大しているか、死亡者が増大して、検査よりも死が早いような状況を示唆します。どちらにしてもいい状態ではなく、この致死率が状況を判断する目安になります。
しかし、スウェーデンの場合はどちらでもない。検査を絞っているためです。入院者は院内感染を起こさないために、検査は必須ですが、あとは検査せずに自主隔離です。その場合、精度の低い検査をすることはノイズを生み出すだけですから、やる意味がない。意味がないのに、医療機関の負担を増大させ、院内感染のリスクを高めます。
※訂正。スウェーデンで死亡者が多い理由は検査だけでなく、病院と介護施設の対策に失敗をして、それらの施設で感染が拡大したためでした。
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