ドイツ人の4割は今も全体主義を希求している—ベルント・ジーグラー著『いま、なぜネオナチか?』[付録編]-(松沢呉一)
「いま、なぜネオナチか?」の補足的内容です。
ザクセン・アンハルト州議会議員選挙
このユニットでは、冒頭でドイツへの過剰な信頼を語りたがる人たちを取り上げましたが、日曜日にあったザクセン・アンハルト州議会議員選挙の結果を見ても、楽観できる状態ではないことがわかりましょう。
2021年6月7日付「日本経済新聞」
旧東ドイツ。
この見出しではAfDが今回初めて第2党になったみたいですが、前回2016年に獲得した第2党の地位を今回も維持したってことです。前回の方がAfDは勢いがあって、前回は97議席のうち23議席だったのが、今回は21議席に後退。支持率も落ちてますけど(−3.5)、それでも全体の2割を超えています。
本年の選挙でCDUが後退する中、むしろ今回はCDUが善戦したって結果です(+7.3)。
強い者に従うドイツ人の傾向は、メルケル首相が引き受けていたところがありますけど、メルケルの時代が終わって、このあとどっちに転ぶのか。現状、AfDが一気に支持を増やすことはなさそうですけど、CDUは保守政党ですから、支持者の中にはそちらに流れうる層が確実にいます。
ドイツ人の40パーセントは権威主義を志向するとの調査
ドイツの記事を読んでいてゾーッとしたのは、今現在も「ドイツ人の40パーセントが権威主義を志向し、民主主義を志向するのは30パーセントしかいない」って指摘でした。この場合の「権威主義」は「=全体主義」です。
これはライプツィヒ能力センターのオリバー・デッカー博士らの調査による数字です。
彼らによる「ライプツィヒ権威主義研究」は2002年から2年単位で行われているもので、この発言は2018年の結果を受けてのものです(ここにSSを出した2018年11月7日付「WISSEN」に出てました)。
この調査は非常に重要。今まで気づいていなかったのが悔しい。
支持政党だけでは見えてこないドイツ人のゲルマン民族至上主義的な考え方、権威主義的な考え方、独裁に対する考え方、優生思想に対する考え方、つまりナチズムを支えたドイツ国民の志向を調べたものです。
オリバー・デッカーはこう言ってます。
ドイツ人の 3 分の 2 は、異なる考え方を持つ人々を排除したいという願望を共有しています。
潜在している意識までを数値化する調査
この報告書はインターネットで公開されているのですが、2020年版は300ページ以上ある大部のもので、なおかつPDFなので翻訳が面倒くさく、一部しか読んでいないことをお断りします。
一部ではあれ、この調査を読んで気づくのは、はっきりと顕在化している意識だけでなく、潜在的な数値も出していることです。テーマのみならず、調査方法が画期的なのです。
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