松沢呉一のビバノン・ライフ

ウィルソン・エドワーズ(威尔逊爱德华兹)と中国の官製報道—SARSの隠蔽工作を振り返る[上]-(松沢呉一)

 

 

民間人権陣線解散

 

vivanon_sentence中国ネタは受けが悪いので、単体で取り上げるのではなく、いろんなところに入れ込んでいく方針に変換したのですが、腹が立つわ、悲しいわで、そうもいかなくなりました。

香港民主化運動の要になっていた民間人権陣線が解散。

サイトの方では声明が出ておらず、以下はFacebookより。自動翻訳です。

 

 

民主化団体の連合体なのですが、ここがあっての香港民主化運動でした。香港方式を参考にしている運動は世界各地に見られますが、香港はただの有象無象の集まりではありませんでした。

ここから学ぶべき点は多数あるはずなのですが、参加団体が次々潰され、逮捕される人たちが今なお出ている状態ですから、詳しい話はできないでしょう。いつか彼らの話が聞ける日を待ちます。中国共産党が消え失せる日です。

 

 

世界に笑いを提供した中国官製メディア

 

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いくつかの国内メディアが取り上げていたので、見た人も多いかと思いますが、中国の官製メディア多数がフェイクアカウントに踊らされた件は笑いました。と同時に泣けてもきます。こんなヤツらに香港の民主化運動は潰されたのかと。

見てない人のために簡単におさらい。「人民日報「新華網」CCTVなどの官製メディアが揃って、自称スイス人の生物学者、ウィルソン・エドワーズという人物がFacebookで、「WHOに勤務する知人が、調査結果を改竄するように圧力をかけられている」と書いたのを真に受けて報道。

これに対してネット上では、すぐさま「7月24日に開いたばかりのフェイクアカウント」「そんな名前の生物学者は93歳の蟻の研究者しかいない」(蟻の研究では有名な学者らしくてWikipediaにも項目があります)との指摘が出てきて、8月10日、在北京スイス大使館のアカウントがこれを取り上げて、「そんな名前の人物はスイスにはいない」など3点を指摘して、「ウィルソン・エドワーズを探しています」とツイートして中国報道をおちょくり、「フェイクニュースだと思われるので、引っ込めては ?」と諫めます。そもそもスイス式の名前ではないですからね。

 

 

これでネタとして扱いやすくなって、すぐさま各メディアが大きく取り上げていて、香港の「立場新聞」もノリノリ。

 

 

 

「国外勢力と結託して国家の転覆を図った」として潰されかねないですが、ギリギリのところで、「立場新聞」はなお奮闘しています。

私もすぐに探したのですが、この記事に出ているように、11日の時点ですでにウィルソン・エドワードのアカウントは消えていましたから、工作員としてはあまりにチープ。中国の留学生か、どこにでもいる中国共産党に媚びたい太鼓持ちが、軽い気持ちでやったら大事になってしまってビビったのでしょう。

 

 

メディアのみならず共産党の組織もまとめてリテラシーなし

 

vivanon_sentenceこれ以降はどこも報じていなかったと思いますが、アカウントを消したことも確認していなかったのか、一部中国メディアでは「内部告発する時は偽名を使うのは当たり前」という擁護論を掲載。

 

 

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