世界220以上の医学雑誌が共同社説として出した異例の声明—地球温暖化が病気を増大させている-(松沢呉一)
ワインも値上りか
今回は 気候変動についてここまで取り上げ損ねていたことやここまで書いてきたことの補足めいた内容です。
「干ばつ・寒波・熱波・洪水によって小麦・大豆・トウモロコシの価格が上昇—食糧危機の時代が始まったか」ではドイツについて触れていなかったので、ドイツでは洪水による農業の影響はどうだったんだろうと思って検索したら、あの洪水の被害地域はブドウの産地で、農業被害の総額300億ユーロの多くはブドウ。ほとんどの農家が打撃を受け、ブドウの10パーセントから15パーセントが失われたとのこと。
今まで「ビバノン」では雹については触れてきていないですが、今年、ヨーロッパでは雹が降った地域が多く、オランダやイタリア、スイスでは果物と野菜に大きな被害をもたらしています。
映像を観ると、人間の拳くらいありそうな雹が降った場所もあるので、果物や葉野菜は商品にならなくなります。
スペインでも豪雨と雹による被害が大きく、こちらも野菜とブドウがやられたそうなので、スペインのワインも値上がりしそうです。
メキシコは何度も豪雨に見舞われていて、とくに南部で1メートルの水に農地が覆われた場所ではトウモロコシも豆も野菜も何もかも壊滅と報じられています。トルティーヤが値上がりか。ワインが値上がりしたところで、生き死にに関わることではないですが、メキシコに限らず、トウモロコシを多用する文化は多いので、数パーセントの被害でも、これだけ広範囲に被害があると、アフリカ大陸だけじゃなく、死者が出そうです。
※2021年8月14日付「agrarheute」 ドイツの農業専門サイトがブドウの被害を伝えています。
220以上の医学誌が社説として出した地球温暖化に対する緊急行動の呼びかけ
次の話題。
数日前に「地球の気温上昇を抑制し、生物多様性を回復し、健康を保護するための緊急行動の呼びかけ(Call for emergency action to limit global temperature increases, restore biodiversity and protect health)」という声明が世界各国の医学雑誌のサイトに社説として公表されました。
これは「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」「ランセット」等、医学雑誌20誌の編集者たちが起草したもので(実際に書いたのは「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」の編集長)、世界220を超える医学雑誌が署名し、共同で社説として掲載。これ自体、例のないことであり、いかに事態が逼迫してきているのかわかります。
同声明によると、気温の上昇やそれによる災害は人々の健康に害を及ぼしていて、過去20年間で、高い気温を原因とする65歳以上の死亡者は50パーセント増加。具体的には熱中症、腎機能障害、皮膚癌、心臓病、熱帯性の感染症など。
数日前に、熱帯性の病原体や媒介する生物の北上によって、日本でもデング熱のような病気の感染が拡大する可能性を指摘しましたが、インドでそうであるように、デング熱で子どもの死亡が増加し、病気によっては妊婦、貧困層への影響も甚大。
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