ワクチン派と反ワクチン派で国民が分断されるヨーロッパ各国—ワクチン離婚も増加-(松沢呉一)
ワクチンを巡って勃発した対立
混迷するヨーロッパがよくわかる報道。
ドイツでは大きなイベントであるクリスマス・マーケットですが、一部で中止が決定しました。それで生計を立てている人たちの失望と困窮はもちろんのこと。社会全体に与えるダメージは大きくて、ワクチン接種した人々はその恨みをワクチン未接種の人々に向けています。「こうなったのはワクチンに反対しているヤツらのせいだ」と行政に対して接種の義務化を求め、反ワクチン派がそれに反発してプロテストが拡大、かつ激化。
この対立は職場、地域社会、家庭内にも持ち込まれていて、ドイツ国民は分断されているという内容です。
この報道に好感を抱け、信用できるとも思ったのは、ドイツでも日本でもあまりによくあるように「ワクチンを打たない人は非科学的な陰謀論者」という決め付けをしておらず、強制しようとするとヨーロッパではファシズムとして反発するのは必然だとしています。ワクチンを拒否している人たちと同時に強制を拒否している人たちがいるため、行政が強い姿勢を打ち出すと、反発も強くなって、現にプロテストの規模が大きくなってきていることもよくわかります。
強制に対する反発が反ワクチン勢力に流れこんでいるにもかかわらず、これを「陰謀論だ」とすると、「強制をファシズムとして拒否するヨーロッパの人々の必然」を見えなくしてしまいます。
職場の対立、地域社会での対立、家庭内での対立
地域社会、家庭での分断が深刻になってきていて、このところドイツのメディアは、このテーマを大きく報じています。
2021年11月17日付「ZDF」
ZDFだけでなく、ドイツの主要メディアはだいたいこのテーマを取り上げています。
これはシビアな問題です。同居していても、それだけのスペースがあり、そうしていい関係があれば、ワクチン肯定派と否定派で家庭内別居をすればいいわけですが、そうはいかない環境、関係の場合は、どちらかが譲らなければならない、否定派は、自分以外の家族がワクチンを接種するのは「どうぞご自由に」ですけど、肯定派は自分が接種しても、接種しない家族がいると元も子もないので、説得しようとし、否定派はいよいよ拒絶するという関係。
現在のように社会全体が義務化に流れる中では、家族との関係を断ってでも、自分の意思を貫こうとするのが出てきそうです。
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