松沢呉一のビバノン・ライフ

ナチスやヒトラーを問題なく比喩に使えるケースをドイツのプロテストで確認する-(松沢呉一)

とめどもないもの—古塔つみのパクリとフリーダム・コンボイの拡大」の続きです。

 

 

 

ハーケンクロイツ(スワスティカ)は本当に振られていたのか?

 

vivanon_sentenceカナダのトルドー首相が、自分と対立する保守党のメリッサ・ランツマン議員に対して、「フリーダム・コンボイでハーケンクロイツ(英語では一般にスワスティカ)を振る人々と一緒に立っている」と表現。メリッサ・ランツマン議員はホロコーストの生き残りであるユダヤ人の孫であり、これに激怒して、「いつそんなことをしたのか」とトルドー首相に詰めより、謝罪を求めています。

トルドー首相は、フリーダム・コンボイの参加者がハーケンクロイツを掲げていたとの説を根拠にしていて、これが「フリーダム・コンボイの背景に極右がいる」といった説につながっていくのですが、そもそも本当にフリーダム・コンボイの中でハーケンクロイツが掲げられた事実があるのか否かが論じられています。

米国からの参加者の中に右派がいて、南軍の旗を出していたのは事実だと思われますし、カナダの狂信的Qアノン支持者が参加していたのも事実っぽいのですが、ハーケンクロイツについては目撃したと言っている人はいながらも、あれだけ動画や写真が撮られているのにブツが出てこないのはひっかかります。

数回前に指摘したように、フリーダム・コンボイでは、しばしばハートマークがシンボルとして使用されていて、白地に赤いハートのフラッグは遠目からは日の丸に見えて、私自身、最初は「在カナダの日本人も参加か」と誤解しそうになりました。

同じように、遠目からハーケンクロイツに見えても、近づくとバッテンがしてあることも十分考えられます。

※2022年2月17日付「CBC NEWS」 トルドー首相はカナダ自由党所属のリベラル派。リベラル派はワクチン接種を進め、保守派がそれに反対する構図が米国同様カナダ議会でも見られて、ちょっと論調に変化がありつつ、メディアもそうなっているのが気持ち悪い。リベラルこそ強制に反対すべきだと思うのですが、科学や医学の盲信は進歩派的と言えなくもない。

 

 

ハーケンクロイツにバッテンをするネオナチはまずいない

 

vivanon_sentence以下は数日前にベルリンで開かれたヘルスワーカーに対するワクチン義務化に反対するプロテストの様子です。

 

 

 

穴あきマスクをしている人やマスクをしていない人もいますが、大半がマスクをしているように見えます。

サムネイルにも使われているように、しばしばプロテスターたちは反ナチス、反全体主義を掲げ、それ対する自由、民主主義、個人主義を標榜しています。ハーケンクロイツにバッテンするネオナチなんていないべ(ナチス否定の極右はいますが、これをネオナチと呼ぶことがそもそもおかしい)。

 

 

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