松沢呉一のビバノン・ライフ

ロシア軍将官の5人目が死にました—情報戦・ドローン戦ではウクライナが圧勝、民間人の無差別殺戮ではロシア軍の独擅場-(松沢呉一)

マリーナ・オヴシャンニコワさんの勇気ある決起に対して根拠なき陰謀論を語る人々—そんな可能性があるのかどうか考えてから発言しようぜよ」の続きです。

 

 

5人目のロシア軍将官が戦死

 

vivanon_sentence連日のロシア将校戦死情報」です。

18日に陸軍司令官のアンドレイ・モルドヴィチェフ中将がウクライナ南部チェルノバエフカにあるヘルソン国際空港で戦死、19日にウクライナ軍がこれを確認し、公表しました。5人目の将官の死亡であり、ウクライナ戦に投入された将官の4分の1がすでに戦死。

ヘルソン空港はロシア軍の支配下にあるのですが、この日のウクライナ軍の攻撃で、多数のロシア兵士が亡くなり、多数のヘリコプターや航空機が失われたとのことです。

ウクライナ・メディアは盛んに報じておりますが、ロシアでは一部メディアがウクライナ軍の情報として軽く紹介しているのみ。こんだけ将官が死んでいると、もはや正確に報じられないでしょ。

19日にはロシア軍のアンドリー・パリイ黒海艦隊副司令官も死亡。こちらは詳細がまだ発表されておらず、戦闘で亡くなったのかどうかも不明ですが、アンドリー・パリイの知人がブログで公表。将官ではないですが、ウクライナ・メディアは高位将校の一人にカウントしています。

なぜロシアの将官たちはそうも死ぬのか—名誉の死を利用して士気を上げることもできないロシアの現実」でまとめたように、ウクライナ軍は将官の位置情報を入手して、ピンポイントで狙い撃っているという説はおそらく正しい。じゃないとこんなに死なない。この時に大いに貢献しているのはドローンです。

※2022年3月19日付「КП України」 アンドレイ・モルドヴィチェフ中将の死を大きく伝えるウクライナ・メディア。

 

 

ドローンが飛び交うウクライナの空

 

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なぜロシアの将官たちはそうも死ぬのか—名誉の死を利用して士気を上げることもできないロシアの現実」に書いたように、ウクライナ戦争が始まってから、よくミリタリー専門サイトを読むようになりました。兵器の解説や戦況の解説はさすがに的確です。

ただ、事前に予測することは軍事研究家やら軍事評論家でも難しいことがよくわかりました。ロシア軍が攻め込んだ時に、現状のような膠着状態や、ロシアの将官が次々と戦死することを予測した人はほとんどいないかと思われます。

兵器についても、「トルコ製のバイラクタルTB2は今回は役に立たないと予測していた人ばかりです。

役に立たないどころか、今回の戦争は「ドローン戦争」と言われています。ロシア、ウクライナ双方ともにドローンを駆使しており、トルコ製のバイラクタルTB2もドローンとされています。

しかし、ドローンというのはプロペラがいっぱいついているヘリコプタータイプのリモコン機のことじゃろ。バイラクタルTB2は飛行機型ですから、私の認識としてはドローンではありません。

私同様の誤解をしている人は多いと思いますが、あのタイプのものだけをドローンと呼ぶのではなく、無人車両・無人航空機・無人船舶などの総称がドローンです。今回初めて正しい言葉の意味を知りました。

バイラクタルTB2のように、攻撃のために設計された無人航空機は無人戦闘攻撃機(UCAV)と呼んで、民生ドローンとは区別します。でも、今回は民生機も戦場で大活躍しているのです。

※私にとってのドローン。子ども向け室内用ドローンで、アマゾンで2,958円。やっす。将来バイラクタルTB2を操作できるように、子どものうちからこういうので鍛えておくといいですね。

 

 

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