松沢呉一のビバノン・ライフ

ロシア軍の戦死者が膨れ上がっていることと、さらに上昇したプーチンの「支持率」との関係—8割がプーチンを支持するロシアの絶望-(松沢呉一)

強制連行されたマリウポリの住民はどこへ?—いよいよナチス的本性を露わにしつつあるロシア」の続きです。

 

 

ロシア将校戦死情報」の補足

 

vivanon_sentenceロシア軍将官の5人目が死にました—情報戦・ドローン戦ではウクライナが圧勝、民間人の無差別殺戮ではロシア軍の独擅場」の段階では、詳細が不明なまま、死亡情報だけ流れていた黒海艦隊副司令官のアンドリー・パリイですが、その後、ウクライナ軍がマリウポリ近郊で狙撃したと報じて、ロシア・メディアもこれを追認しています。

またも位置情報が漏れて、ウクライナの敏腕スナイパーの餌食になったのか?

ロシア軍将校が簡単に死にすぎて、一部情報に混乱が生じており、死亡したロシア将校の5人にカウントされている例がありますが、アンドリー・パリイは将官ではありません(追記:これについては後述)。同日に亡くなったアンドレイ・モルドヴィチェフ中将と混同したものでしょう。

アンドリー・パリイは初の海軍の佐官以上の死亡であり、これはこれで相当に重要な意味を持つらしいのですが、軍隊のことはよくわからんので、この件はパスするとして、私としては情報の流れが異例だったことに着目しました。

※2022年3月20日付「ForPost」 ロシア支配下にあるクリミア半島セヴァストポリのロシア系メディア。写真はアンドリー・パリイ。葬儀は22日か23日とのことなので、友人知人はご参列ください。

 

 

国会議員から始まった訃報

 

vivanon_sentence今回の第一報は、ロシア連邦議会の上院議員であり、アンドリー・パリイの友人であったエカテリーナ・アルタヴァエワによるものです。彼女はロシア発のSNSであるTelegramに投稿

ここではただ亡くなったことだけを記述していて、そのあとウクライナ軍がより具体的な情報を添えて死亡したことを公表していますので、不自然さはないのですが、戦時の情報、とくにロシア発の情報は慎重に受け取ることが必要かと思います。

ロシア兵の捕虜が危惧していたように、捕虜になって本国に返還されると殺されかねない。そんなことがあるのかどうか私はわからないですが、兵隊がそう恐れる国ってことです。殺しておいて、戦死として扱い、国民の復讐心を刺激する。上官の命令に背いた場合も同じでしょう。

実際に戦闘を放棄する、民間人の射殺を拒否するといった抵抗をする兵士は少なくないはずです。正義がないんですから。

そろそろ、それなりのポストにある軍人でも軍の方針に反抗したり、ウクライナ軍に投降しようとして後ろから射殺されるようなケースも起きているかもしれず、その場合はロシア側から先に「ウクライナ軍に殺された」と発表しそうですから、ロシア発の情報は精査した方がいいと思ってます。

エカテリーナ・アルタヴァエワの投稿。うちのパソコンのせいなのか、ログインしないと見られない設定なのか、写真しか表示されず、これはロシア・メディアのSSです。

 

 

高まり続けるプーチンの「支持率」

 

vivanon_sentenceロシア軍の将官も末端の兵士もどんどん死んでいく一方で、プーチンの支持率とみなせるヴツィオムの数字がさらに上がりました。

 

 

 

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