松沢呉一のビバノン・ライフ

またもウクライナ軍によるロシア兵捕虜殺害疑惑映像—証拠として弱い上に、これをロシアが批判する資格はない -(松沢呉一)

 

ウクライナ軍が無抵抗のロシア兵を殺害したかもしれない動画

 

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数日前に「メデューザ」で知ったのですが、またウクライナ軍によるロシア兵の虐殺疑惑が浮上しています。

親ロシア派のウクライナ人ブロガーがTelegramに公開し、それをロシア軍関係者が拡散したらしいのですが、元は消えているのか、「メデューザ」はTwitterから引っ張ってきています。

以下です。

 

 

前半の野原での銃撃戦の様子と、後半の民家脇の投降シーンとは同じ日のつながりなのかどうかわからないのですが、BGMがつながっていますから、撮影者と思われるヒゲの男(黄色い腕章はウクライナ軍のもの)がどこかでまとめて公開していたのかもしれない。

パート2は、このツイートのコメントという形でくっついてますので、Twitterで観てください。パート2はドローンの映像で、頭から血を流して、10名余りの兵士が倒れています(「メデューザ」には12名とありますが、はっきりとはわからない)。二つの動画をつなぎ合わせると、その間に虐殺された可能性があるというわけです。

パート2にはBGMがなく、バラバラに公開された映像であることが推測できますが、寝ている兵士が足につけている赤いベルト、建物の壁にかけられた緑色の鍋のようなもの、赤いこども用の車などが合致していて、両者が同じ場所であることは間違いない。

しかし、これは不当な殺害の決定的な証拠にはならんでしょう。

最初の動画は、銃声ととともに画面が乱れて終わります。ウクライナ軍が撃ったのであれば、あのように終わる意味が不明。味方であってもまさかその場で撃って殺すとは思っていなかったために動揺したのかもしれないですが、同時に隠れていたロシア兵らが反撃してきたとも考えられます。事実、パート1で確認できるのは8名か9名しか確認できず、なお数名が隠れていたのではないか。あるいは、投降するふりをして隠していた銃で撃ってきたら撮影者も身を伏せるのは当然だし、射殺するのはやむを得ない。

どちらなのか、あるいはそれ以外なのか、この二つの映像だけでは確定しません。ウクライナ軍の国際法違反の映像かもしれないし、ロシア軍の国際法違反の映像かもしれないわけです(偽装降伏による攻撃も国際法違反)。

もちろん、戦争犯罪の可能性がある以上、ウクライナ軍は調査して、その結果を公表すべきです。現場にいた兵士を探しだして、その証言を公開した方がいい。しかし、仮に虚偽の証言をした場合に、それを覆すことは難しそうです。

 

 

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