松沢呉一のビバノン・ライフ

だいたいわかってきたダリア・トレポワ容疑者の足跡—しかし、真相はなお不明-(松沢呉一)

国民共和国軍が出したタタルスキー爆殺の犯行声明は信憑性が低い—モスクワのロシア国防省が燃えた」の続きです。

 

 

小泉悠による国民共和国軍の評価

 

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数日前の日テレ「深層NEWS」でウラドレン・タタルスキー(マクシム・フォミン)爆殺事件を詳しく取り上げていました(24分頃からです)。

 

 

さすが小泉悠、「かつての軍事批評家は政権と距離を置いたリベラル派がメインだったのが、今は武器、軍事に必ずしも詳しいわけではなく、愛国心が強く、自ら銃を持つタイプになってきていて、戦争に賛成していながらも、プーチン政権のただのプロパガンダではなく、政権が危険視する存在にもなっている」(要旨)という指摘は長く詳細に見ている人しかできまい。言うまでもなく私は知りませんでした。

国民共和国軍が犯行声明を出したことにも触れていますが、小泉悠は懐疑的で、国民共和国軍が「存在していることについても疑問がある」と一蹴しています。ここは「さすが」というより、「当然」です。私もそう判断していたことはこれまで書いてきた通り。

小泉悠は背景までは説明していないですが、ロシアで国会議員だったイリヤ・ポノマレフは、国会議員として唯一クリミア侵攻に反対して迫害され、ウクライナに亡命、その地での自分の存在価値をアピールするために捏造したのが国民共和国軍だったと私は見ています。ダリア・ドゥーギナ暗殺の時点でもそう疑ってましたし、あの事件からそれ相応の時間が経っているのに、具体性がなさすぎです。徴兵事務所に対する火炎瓶攻撃も国民共和国軍の仕業だと言ってましたが、逮捕者も出ているのに、その組織について当局からも、西側の諜報機関からも発表がないのは不自然です。それらの国民共和国軍の情報がイリヤ・ポノマレフの手持ちのところからしか出てこないことも疑惑を深めてます。

それでもなお「イリヤ・ポノマレフの捏造だ」とまでは断定できないですが、どんな国にも虚言を弄するのは一定数いるってことをつねに意識しておいた方がいいかと思います。

まっとうなメディア、まっとうな個人は国民共和国軍の存在に懐疑的であり、取り上げるとしても、「存在自体が怪しい」とわかる解説を添えるものですが、まっとうではないメディア、まっとうではない個人が。今回も国民共和国軍が実在している地下組織であるように扱ってます。日本のテレビ番組では解説がないままその声明を紹介しているケースの方が多いかも。

それを信じる人がいて、各国でカンパしたり、擁護したり、批判する人々を罵倒したり、支える会を結成したりするわけです。だから嘘つきは噓をつき続けます。どこの国でも一緒です。

 

 

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