松沢呉一のビバノン・ライフ

効果のある落選運動・効果のない落選運動—川崎市議会選挙の結果[後編]-(松沢呉一)

落選運動の難しさを理解していない人々の無駄な行動—川崎市議会選挙の結果[前編]」の続きです。

 

 

安直な落選運動は成功しない理由

 

vivanon_sentence

前にどっかに書いたこととかぶりますが、浅野文直市議に対する落選運動をサンプルに、改めて「落選運動の難しさ」について書いておきます。

SNSは自分に考えの近い人を集めて、その中で情報を回すだけになりやすい。Colabo周辺の人々に自民党に投票しているような人は少ない。その中で川崎市宮前区に住んでいるのはどれだけいるんだって話。宮前区在住の共産党員やシンパに届いたとしても、最初から自民党の候補に投票するわけがない人たちです。

よって、効果を求めるならビラの配布などの方法をとるべきです。路上で通行人に配るか、ポスティングをするか。情報が届く範囲を考えれば当然です。その意味で、神奈川新聞の暴挙は数百票減らした可能性はあって、だからこそ批判されていい。

それに比してSNSの書き込みはあまりに微力です。それでも学校時代の友だち、親戚、趣味の仲間に、川崎市宮前区在住で、自民党の候補に投票するかもしれない人がいたとして、落選運動のツイートを見て、すぐさま信じる人はいないでしょう。

浅野市議に投票するつもりの人は、Colaboがどういう法人なのか、それを支持している人たちがどういう人なのかを知って、すぐに信用しますかね。

 

 

Colabo問題が大きく浮上する前、昨年の総選挙での共産党応援動画です。

大学の教員でも大学名を出していない人がいますが(白井聡)、出したところで普通は問題にはならない。しかし、Colaboの場合は一般社団法人の性格上、また、委託事業を受けている立場上、公私を峻別すべきであり、ここでColaboの名前を出すのは軽率すぎます。前から指摘しているように、仁藤夢乃は公私の別がつけられない人だと思います。

落選運動は印象が悪いし、身元がわかるとそこで効力が減ずるので、身元がわからないように、よく怪文書という形がとられます。「☓☓市の未来を憂慮する会」といった適当な名称をつけて。いやらしいやり方ですが、客観性を装うには賢明な方法ではあります。

また、ネット上での落選運動は、その情報を見た人がすぐに検索できてしまうので、今回のように、内容のない中傷はやめた方がいい。噓がすぐにばれます。

支持者であっても「これはひどい」と思える内容で落選を狙わない限り、投票するのをやめる方向に行かない。「浅野文直は人を殺した過去がある」「今も万引きをよくやっている」「多数の愛人がいる」とか。あるいは「Sioさんは浅野文直がギャラを払って雇ったアルバイトだった」でもいいでしょう。これが事実だったら、さすがに冷める人が出てきます。

そこまでじゃなくても、Colabo批判派が進展を待っている刑事告発についての決定的な反論でもいい。

格好のネタなのに、Colabo陣営はなかったことにしているのですから、意味不明です。

 

 

落選運動は単純接触効果を刺激する

 

vivanon_sentence

効果がないだけでなく、対象の得票を増やす効果についても見ておきます。これを理解すると、いかに今回の落選運動が馬鹿げていたのかがよくわかり、それをやっている人たちの浅はかさがよくわかります。ポスターをそのまま出して「投票するな」とやることが投票を促す仕組みに無自覚なアホたち。

落選運動によってColabo問題を初めて知り、興味を抱いて検索したら、かえって浅野市議に投票することになるでしょう。Colabo批判派と支持派が9対1という比率が今も続いているのかどうかわかりませんけど、新規でこのことを知ったら、Colaboに批判的になる人の方が圧倒的に多い。とくに生活保護の不正受給指南を知ると腹を立てる人が多いはず。

 

 

next_vivanon

(残り 1397文字/全文: 3036文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ