ウクライナによるドローンがモスクワ国防省のすぐ近くに墜落—7月に入ってウクライナ戦争に触れてなかった事情と事実の重みについて-(松沢呉一)
遅々として進まぬ反転攻勢とロシアによるオデーサへの攻撃
今月に入って、「国外脱出したロシア人たちの苦渋」シリーズは出してましたが、それ以外のロシア・ウクライナ関係のものは1本も出していませんでした。フィンランドはヨーロッパでもっとも人種差別が強い国であることが意外だったのか、フィンランドの3本はあのシリーズとしてはアクセスが多かったのですが、戦争の話が他になかったためかもしれない。
戦争について取り上げてなかったのは、気分がどんよりしてしまうためです。「反転攻勢は失敗した」とまでは言えずとも、「成功した」とも言えず、膠着状態が続いています。前線でのんびり休憩しているはずはなく、今も兵士は死に続けています。
その間に、ロシアは民間人へのミサイル攻撃を強めており、世界遺産に指定されているオデーサの歴史地区にある正教会の建物が破壊されました。
反転攻勢がうまくいっているなら、こういった攻撃は「なにくそ」となり、ロシアに対する戦闘意欲をかきたてられるのでしょうが、今の閉塞した状況においては、ウクライナの人たちの厭戦気分を高めてしまいそうです。
米国がクラスター爆弾をウクライナに供与
一方で、ドローン船を使って、クリミア大橋の再度の爆破に成功など、ウクライナ側のポイントとなることも起きてますが、占領地を奪還したわけではなく、敵の補給路を断っただけです。これを活かすことができなければなんの意味もない。
触れにくかったのは、判断が難しいことが増えたという事情もありました。
米国からウクライナにクラスター爆弾が供与された件は、「両国ともクラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)に加盟していない」「クラスター爆弾が非人道的なのは子爆弾の数が多い分、不発弾の数も増え、戦後までも一般の人々の犠牲を生み続けることだが、すでにロシアはウクライナでクラスター爆弾を多数使用しているため、いずれにせよウクライナは不発弾処理をしなければならない」「ロシアのクラスター爆弾の不発弾率に比して、米国のクラスター爆弾の不発弾率は10分の1以下」「米国供与のクラスター爆弾はウクライナ領土でしか使用しない」ということなので、日本がクラスター爆弾禁止条約に加盟していても、文句を言う筋合いではないかと思いました。黙っていればいいのです。
つうことで私も黙っていました。そもそも専門知識を要する事象については触れないようにしているってこともあって。
そうこうするうち、すでにクラスター爆弾は実戦配備されています。
塹壕に潜んでいるロシア兵には有効です。ロシア軍はもう使っていたんですから、もしウクライナ軍を非難するなら、その前にロシア軍を何倍も批判すべきです。
これ以外にロシアの複数の将官が罷免されたとの情報があり、プリゴジンの乱に同調していたのではないかと言われていますが、詳細がわからない。プリゴジンやワグネルの動きもはっきりしたことはわからないので触れられませんでした。
1ヶ月ぶりにモスクワへのドローン攻撃
そんな状態が続いている中、ひさびさに取り上げなきゃと思ったのがこれ。
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