韓国・性売買特別法についての事実を確認する—仁藤夢乃の発言は信用できない[資料編]-(松沢呉一)
※仁藤夢乃は、韓国の性売買特別法ついても適当なことを言ってます。それも批判するつもりですが、今回はその資料編です。
韓国・性売買特別法について
「あおちゃんぺ呼びかけの「ガルパレ」大成功—彼女は何を求めていたのか」で取り上げたように、SWASHの要友紀子は「しらべえ」に「あおちゃんぺ主催「ガールズパレード」への批判や揶揄が的外れである理由 男性参加者が多かった背景とは」を寄稿。そこにこう書いてました。
現代の韓国でも、性売買特別法(2004年施行)反対の国会前集会には6,000人のセックスワーカーたちが集まり、その後も10年以上に渡り毎年当事者女性たちがソウル市街でデモや集会を行なった。
このときは韓国内12地域のセックスワーカー約7,000人からなる「ハント女性従事者連盟」がオーガナイズした。
性に関わる仕事をする女性たちはパレードやデモに集まらないとか少ないというのは嘘で、そのような嘘を広めようとする人達は、当事者の意見をないことにしたいだけだ。
この文章の前に、売防法に反対した東京都女子従業員組合連合会の話が出ています。これは新吉原女子保健組合を筆頭とした赤線の女たちの組合が集まった連合体です。この全国組織が全国接客女子従業員組合連盟で、組合員は2万人を超えていたはず。これについては今まで何度も書いているので省略。
今から60年以上前に、宗教団体(矯風会、救世軍)や婦人団体に潰された日本の従業員組合と、韓国の従事者連盟は、成り立ちが全然違いますが、セックスワーカー潰しの法律に立ち上がった点では同じです。
韓国では、ハント女性従事者連盟以外にも、セックスワーカーの調査・サポートの団体であるGiantGirls(GG)が性売買特別法(성매매 특별법)に反対していました。
GiantGirlsはフェミニスト(まともな方のフェミニスト)とセックスワーカーによって2008年に組織され、同法の影響を調査して、セックスワーカーにとってマイナスの効果をもたらすとして同法に反対。
2017年にSWASHがGiantGirlsのメンバーを招聘していて、私もけっこうな時間をともに過ごしました。
研究者やメディアからの批判も強く、性売買特別法は憲法違反であるとして法廷闘争も行われました。
※「しらべえ」の記事に使用されていた要友紀子撮影の写真。ハント女性従事者連盟の集会の様子
性売買特別法がもたらしたもの
性売買特別法については以下の記事に詳しい。
Research Project Korea「South Korea: Sex workers fighting the law and law enforcement | Reblogged from Open Democracy」
大変いい内容です。GiantGirlsのメンバーが調査、執筆に関与しているようなので、バイアスがかかっていると見るムキもありましょうが、事実関係はおおむね正確かと思います。
ここに書かれているように、性売買特別法が制定されたきっかけは火災でした。監禁状態に置かれたセックスワーカーが多数亡くなったことから、政府は売買春の根絶を目指します。
監禁云々という話はずいぶん経ってから出てきたもので、実際に監禁されていたのか、監禁に近かったのか、建物の構造上、監禁と言ってもいいものだったのかはっきりしないですが、韓国には悪質な業者がいるのは事実のようです。
1961年に売春を禁止する法律は制定されてましたが、刑が軽く、実質的に容認されてきた売買春が性売買特別法によって厳しく取り締まられるようになり、「2014年11月には24歳のシングルマザーが、客を装ったおとり捜査官による逮捕を逃れるためにモーテルの部屋から飛び降りて死亡」といった事件も起き、セックスワークは地下に潜り、労働環境が悪化したことが書かれています。
その過酷な実情はGiantGirlsのメンバーにも聞いていますので、リンク先を参照してください。
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